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その選曲が、映画をつくる

デヴィッド・フィンチャー『ザ・キラー』 ネオリベの暗殺者はザ・スミスを聴く

2023.11.17

#MOVIE

The Killer. Michael Fassbender as an assassin in The Killer. Cr. Netflix ©2023
The Killer. Michael Fassbender as an assassin in The Killer. Cr. Netflix ©2023

「笑える」選曲としてのThe Smiths

暗殺者が狙撃に備えてヨガをしながら、あるいは、狙撃に集中するためにThe Smithsの曲を聴く。他にも、移動中にリラックスするためThe Smithsを聴く。殺人を犯した直後に心を落ち着かせるためThe Smithsを聴く。とにかく、あらゆる場面で、The Smithsの曲を聴くのだ。どうやら彼は、仕事中の様々なシチュエーションにあわせて、お気に入りの「The Smithsプレイリスト」を作っているらしい。

重厚な殺人ノワールと、流麗なギターサウンドで知られるThe Smiths? 一見、かなり妙な取り合わせに思われるかもしれない。フィンチャーは、本作がプレミア上映された『第80回ベネチア国際映画祭』の記者会見で、次のように述べている。

「The Smithsの曲は、まず“How Soon is Now?”を使いたくて、ポストプロダクションの段階で追加したものだ。殺人者が不安を和らげるためのツールとして聴くというアイデアを気に入ったんだ。瞑想用の音楽としても気に入ったし、愉快で面白い曲だと思った」

「レコーディングアーティストによる音楽で、(The Smithsのカタログほど)皮肉っぽさとウィットを兼ね備えたライブリーはないと思う。この男が誰なのか、私たちはあまり知ることができない。彼のミックステープを通して、彼を知る窓口になれば面白いと思ったんだ」

出典:https://www.stereogum.com/2235024/david-fincher-the-killer-smiths-songs/ より

また、10月にシネマテーク・フランセーズで行われた監督へのインタビューによると、当初は、ダスティ・スプリングフィールド(Dusty Springfield)やモーツァルト、Siouxsie And The Banshees、Joy Divisionらによる様々な楽曲の使用が試みられていたようだが、権利的な問題もあり難航していたという。そんな中で、撮影監督のエリック・メッサーシュミットがThe Smithsの曲を候補に挙げ、更にはレズナーの強い賛同もあり使用に至ったらしい。

The Killer. Michael Fassbender as an assassin in The Killer. Cr. Netflix ©2023

重要なのは、同じインタビューで述べられているとおり、どうやらフィンチャーは、The Smithsの曲を単なるクールな背景音楽として使おうとしたのではなく、映像に重ねた際に生じる「笑える」感覚を重視したがゆえに採用した、ということだ。

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