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SNSがしんどい
オカヤ:クローズドな、誰にも聞かれないところでする雑談って、大事だよね。いまのSNSって、すぐに強い言葉で反応したり、人との距離感が近すぎるような人しかコメントをしなくなってて、あとの人は「何か言ったら良くないんじゃないか」と思って黙って見てる感じだから。
鶴谷:そうなんだよ! 陰口って悪いことのようだけど、むしろクローズドな場で言うのは大事だと思う。
オカヤ:人と話すと、親しい人の中にも違う意見の人がいて、それで気づいて考え直したりもできるんだけど、その感じがもうインターネットだと難しくなってるよね。
鶴谷:今にして思えば、昔のTwitterが奇跡だったのかもしれんよね。
オカヤ:そうだよね。私たちTwitterで知り合ったんだもんね……。
*東日本大震災の直後、作家の長嶋有さんが「息抜き」にとTwitter上ではじめた言葉遊びのやりとりを介して二人は知り合った。二人は、その顛末をモデルにした小説『問いのない答え』(長嶋有、文藝春秋刊)の表紙も手がけている。
鶴谷:なのに、前ほど見なくなっちゃったよね、SNS。
オカヤ:私も。あと、SNSでは、言動が一致しないことや矛盾があることを、あんまり許してもらえない感じがある。
鶴谷:みんなそこに厳しくなってるけど、言動なんてそういつも一致しないものだよね。
オカヤ:『阿修羅のごとく』でさ、「出てけよ!」って言いながらすがりつくシーンがあったじゃん。すごい上手い脚本だと思ったな。
鶴谷:『阿修羅のごとく』、向田邦子すごすぎる! と思いながら見てるよ。「出てけよ!」ガシッ、わかるよ。しちゃうよ(笑)。
オカヤ:そういう、変なことしちゃったり、自分でも意味がわからないことって、いっぱいあるよね。

鶴谷:あとさ、例えば「食い尽くし系」の話題が流行ってるのを見ちゃうと、友達の子供に「いま食べ盛りでいっぱい食べるでしょー」とか言ったときに、「あっ、今のって含みがあったかな」みたいなことを考えちゃったりする。そんなにみんな「インターネットの人」じゃないのに、ついみんなそれを見ているみたいに思っちゃうな。
オカヤ:私は、スポーツ観戦すら、「争わないで」って思っちゃって苦手なぐらいでさ。選手のみなさんはやりたくてやってるのに、「こんなに走ってつらかろう」「こっちはあったかいところにいてお酒飲んでてごめんね」みたいな気持ちにすぐなっちゃう(笑)。だから、言ってる内容が正しくても正しくなくても、SNSで応酬を見て、心を痛めなきゃいけないことになるのが、わりとしんどいんだよ。
鶴谷:見ちゃうとあわあわしちゃうよね。しかも、オカヤさんは自ら深追いするよね。
オカヤ:そうなの。「1ツイートだけで判断するのは恐ろしい」と思ってるから、その人のホームに行って過去のツイートとか見ちゃう。
鶴谷:そのツイートに即座に「それ間違ってますよね」って言うんじゃなくって、その人がどういうピースでできてるからこう言ったのかをわかりたい、ってことでしょ?
オカヤ:そうそう。Amazonで悪い評価をした人が、ほかに何を買ってるのかとかも見に行っちゃう。「ああ、この人はほかも星1しかつけてないな」と思って安心したりね。でも、その人が何を考えてるかなんて、ほんとなら考えなくてよかったわけじゃん。ぜんぜん知らない人だし。
鶴谷:うんうん。本当にそうだよね。