INDEX
うまく怒れない二人
村田:私、英語で書評をしていただいいても、単語が難しくて読むことができないんです。ほかの言語ならなおさらで。英語が得意な編集者さんが翻訳して読んでくださって、「一見褒められているような感じだけど、もしかしたらやんわりと批判されているかもしれません」とおっしゃっていて面白かったです。
オカヤ:京都の人みたいな書評ですね(笑)。そういう、嫌味の度合いとかも、言語や文化によって違うだろうから、知らないとわからないですよね。大袈裟に褒める人たちなのかもしれない、とか。
村田:たしかに。書いている評論家さんや記者さんがどのような方なのかもわからないですしね。文脈が全くわからない。厳しいことを書いているようでも、その人にしては褒めている方かもしれないのですが、ちょっとそこまで把握するのは難しいです。
オカヤ:そうだよね。どういうのが好きな人なのかもわからないもんね。あと、私の場合は、ぼんやりしていて、人の悪意になかなか気づかないんですよ。
村田:前にそのお話をした気がします! 私も、1年くらい経ってから、あれは怒ることだった、と気がついたりします。私はそもそも怒りをうまく抱けなくて。みんながやってるような怒り方が自分の中に存在していないんです。
オカヤ:なるほど。
村田:なんらかの事情で怒りを表明しなくてはいけないときは、『今日から俺は‼︎』の三橋さんを参考にしています。説明が難しいのですが、中学生くらいのとき、大きな怒りではなくて日常の怒りが描かれている作品が珍しいように思っていて、三橋さんをお手本にし始めたのかな。
オカヤ:といっても、別に蹴ったりするわけじゃないですよね……? 声に出して「チッ」とか言うんですか?
村田:いえ。「あの、すいません……」の声の出し方を、幽霊のような声ではなく、私の中にかろうじている三橋さんを呼び出して相手の方に伝えるという感じでしょうか……。
オカヤ:ちゃんとコミュニケーションしようとしていてえらいなと思いました。私はわりと、シャッターを全部下ろすみたいに「無」になっちゃうので。あ、友達から感想をもらうのとかは、どうですか?
村田:どうでしょうか、少なくともこちらから求めることはないです。元々あまり小説を読まない友達が、無理に読んでくれると、申し訳ないし、大変そうというか、無理しないでいいよ、と思います。本と人間の出会いとして、あまり健全ではないように感じてしまいます。
オカヤ:なるほど。漫画の場合は、ふつうの人は漫画と言われるとまず『少年ジャンプ』みたいなものを想像するから、まずそこでズレが起きやすい気はしますね。親戚が子どもに読ませようとしたりとか……。
