漫画家オカヤイヅミさんが、ゲストを自宅に招いて飲み語らう連載「うちで飲みませんか?」。第4回はベーシストのかわいしのぶさんにお越しいただきました。
音楽と漫画、それぞれのフィールドで様々な経験を経て、今は自然と「楽しく続けていくあり方」にたどり着いたというかわいさんとオカヤさん。作品を作ったり、カルチャー分野で仕事をしている人にとっては、読めば未来に希望が持てるかもしれない、サシ飲みの模様をお届けします。
当日振る舞われた「焼きナスキーマカレー」のレシピもお見逃しなく!(レシピは記事の最後にあります。)
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音楽は楽しいから、今からでもやった方がいい!
かわい:お招きありがとうございます! この連載は、オカヤさんのごはんがおいしそうでうらやましいなーと思いながら読んでいたので、すごくうれしいです。
オカヤ:ようこそ。かわいさんとは、グッズ作りでシルクスクリーンを一緒に刷りに行ったり、南インド料理を一緒に習ったり(※1)、なんだかいろいろなことをして遊んでますよね。最初に会ったのは『さるフェス』(※2)でしたっけ?
かわい:最初は、うーん、どこだっけね(笑)。思い出せないことが増えていくなあ。
※1 その模様は、同人誌『作ろう!南インドの定食 ミールス』(趣味の製麺BOOKS)に収録されている。
※2 『さるハゲロックフェスティバル』(通称『さるフェス』)……音楽、演劇、漫画、お笑いなどの分野で活動するクリエイターが集まり、ライブやステージ、模擬店を展開する、文化祭のようなオールナイトイベント。新宿ロフトで毎年1月に開催されている。主催は漫画家のしりあがり寿。

ベーシスト。1971年、東京生まれ。18歳のときに出会ったメンバーとバンド「SUPER JUNKY MONKEY」を結成。1994年にソニーレコードよりデビュー、日本とアメリカを行き来しながらの活動を続け、1999年に一時休止。以降、さまざまなバンドやユニットに参加。現在は主に、大友良英スペシャルビッグバンド、坂田明COCODA、渋谷毅、KERA & Broken Flowers、あでなカルテット(内橋和久)、プノンペンモデル、などで活動中。カレーが大好き。
オカヤ:私、ずっと音楽にコンプレックスと憧れがあるんですよ。実はいま友達の漫画家と「もし楽器をやるなら、何の楽器にする?」みたいな話をしていて。
かわい:おお! それは、どんどんやっちゃった方がいいですよ。
オカヤ:『さるフェス』にも、漫画家さんや作家さんがやっているバンドが出演してますけど、書き手って中年になるとバンドをやりたくなるのかもしれません。音楽は、人と一緒に演奏できるのがいいですよね。漫画は人と一緒には描けないから。
かわい:そっか。みんなで作る、みたいなことがないのか。
オカヤ:あんまりないですね。あと、ふだん表に出る仕事じゃないから、出てみたくなるんでしょうね、きっと。発表会みたいなことがしてみたくなる。
かわい:それはね、絶対やった方がいいと思いますよ。音が出るのって、それだけでまず楽しいからね。

オカヤ:かわいさんがやっている即興演奏のライブっていうのは、事前に練習というか、合わせてみて「こういう風にできそうだね」となってからライブをするものなんですか?
かわい:当日、会場の音響をチェックする程度で、練習や打ち合わせのようなものはほぼないですね。
オカヤ:その場で試してみるしかないんですね。じゃあ「うまくいってないな」というのが、見ていてわかる時もあるんですか?
かわい:何も決めていないのでそういう場が生まれることもあるけど、自分が意識してやることは沈黙もひとつの音になるし、うまく言えないけれど、「面白くなさも面白くなる」んです。盛り上げようとかかっこよく見せようとか、場をコントロールしようとするとダメになる。
オカヤ:へー。私はあんまり即興性のあることをやったことがないから、恐ろしい……。
かわい:台本なしで人前でおしゃべりしてるのと一緒だよ。
オカヤ:そうか。あ、ちょっと俳句とも近いかもしれないですね。俳句って、何人かで集まって「いまこの2時間で作ってください」みたいなことをやったり、それで「その場に向けた良い俳句」が作られたりするんですよ。
かわい:似てるかもしれないね。場所も音の一部っていうか、全部がきっかけになってるっていうか。
オカヤ:そういうの、面白いな。
かわい:よし、カモン!
オカヤ:そんな、自分が演奏でやれるようになるとは思えないですけど……。
かわい:いやいや、やっちゃえばいいよ!
