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レシピと文学は相性が悪い
滝口:レシピには、もうちょっと別の書法があり得るのではないか、みたいなことも思っちゃうんです。
オカヤ:それで言えば、友達からお土産でチェコスロバキアの料理本をもらったんですけど、なんかね、詩みたいなんですよ。気持ちが書いてあったり。「私たちがどれほど森のきのこを愛しているかあなたは知らない」とか。
滝口:面白い。僕はそういうレシピの方が料理できる気がするな。レシピって、ぜんぶが命令ですもんね。そもそも「こうしろ」って命令されるのが嫌いだというのもあるかも。
オカヤ:言い方の問題なのかな。「小さじ1入れてはいかがでしょうか?」とかだといいのかな。
滝口:ああ、その方がちゃんと書いてある通りできる気がする(笑)。あとは、選択肢があるとか。
オカヤ:ゲームブックみたいなレシピ本があったら面白いかもしれないですね。ハッシュドポテトの「片栗粉? 小麦粉?」で選んだページに進む、みたいな。
滝口:楽しいですね。うまくいけば、より作る人の好みに近い料理になるかもしれない。
オカヤ:「家にあるものは何ですか?」からはじまって、何ができるかはわからない。でも、それだとレシピの意味があるのかな。それはもう小説かもしれない。レシピと文学は相性が悪いのかもしれませんね。
滝口:そうですね、命令形って小説の文章にはほとんど使わないですし。
オカヤ:作家や漫画家の人、みんなに聞いてみたいですね。レシピをちゃんと読むかどうか。
滝口:うん。小説家に共通した傾向とかありそう。
オカヤ:漫画家も読まなそうな気がするな。

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