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オカヤイヅミの「うちで飲みませんか?」

レシピと文学は相性が悪い? 滝口悠生と語る、創作と料理

2024.3.12

#BOOK

締切が迫っても書かずにいることのつらさ

オカヤ:漫画を考えるときにも、プロットを立てて全体の流れを作る人と、次のコマ、その次のコマを考えていく人がいて。私は、次のコマ、次のコマというふうに考えた断片をいっぱい作っておいて、合体する感じですね。連載で書くことに慣れているので、次の話までしか考えていなかったりします。

滝口:僕は料理の工程と完全に一緒で、連載もいま締切の分しか考えてないです。

オカヤ:連載1本分の原稿は、ひとまとまりとして考えてます?

滝口:どうにかする、ということしか考えてないです(笑)。最初から進めていって、行きつ戻りつって感じだから、あんまり終わりが見えていることはないですね。1日ではなかなか書き終わらないから、書き途中で読み返して戻ってみたり、ちょっと俯瞰することはしますけど、でも、書き終えるまで終わりがどうなるかはほとんどわかりません。

オカヤ:すごくプロットがちゃんとしている作品でも、書いている側は意外とそんなにちゃんと考えてないかもしれない、という気もしますよね。

滝口:そう。事前準備の仕方の問題で、やる作業としてはそんなに違わないような気もする。心配性かどうかの問題というか。僕は、準備は何もしないで、もうやらないと間に合わないというときになってはじめて手をつけるんですけど、「刻々と締切が迫ってくるのに何もしないことのつらさ」に耐えられないタイプの人もいますよね。

オカヤ:というか、執筆のつらさって、主にそれですよね! 自分が何もしていない時間に耐えられるかどうか。

滝口:だから、プロットや事前準備をしておくことで、「何もしていなくはないぞ」という安心があるのかもしれませんね。僕はできないからわからないですけど。

オカヤ:私は、やっていなくてつらいと思っている時間も含めて、スケジューリングするのが大事だなと思うようになりました。それも仕事だ、って。本当にそれが一番つらいから。いや、だったら描けばいいんですけどね(笑)。でも、考えてないわけではないんです。

滝口:そうそう。だから、形になっているかどうかの違いだけのような気もするんです。それにしても、もうちょっとやっておけばよかったなといつも思いますけどね(笑)。

オカヤ:漫画は、ネームを考えてから作画をするから、作業が二重なんですよ。で、絵を描いている間は、考えなくていいんです。

滝口:ああ、漫画家さんは「ラジオを聴きながら描いたりできる」ってみなさん言いますよね。考えるところが終わっちゃえば気が楽なんですね。小説はそれはなかなかできないなあ。人にもよると思いますけど、僕は、書き進めるのも、止まらずに突っ走るというよりは、泥沼の中をのたうち回る感じなので。

オカヤ:私、絵はじっくり描くと、すごくつまらない絵になるんですよ。

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