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NEWS EVENT SPECIAL SERIES
オカヤイヅミの「うちで飲みませんか?」

西加奈子と語る、中年の正しい振る舞い方

2023.12.5

#BOOK

西さんは「自分で自分の居場所を居心地よくできる力」がある

オカヤ:私、コロナ禍で外出できなくなったときに、「居心地の悪い飲み会に行きたい」と思ったんだよね。大勢がいて賑やかな会の端っこの方で、「そ、その唐揚げ食べていいですか?」と言っている、みたいなのが、意外と楽しかったんだなと思って。

西:へー。それはなんでなん?

オカヤ:無理やり、自分とぜんぜん違う、テンションの高い場所にいてみるのが面白いっていうかさ。あと、人がいっぱいいるところだと、逆に仲間に入れてもらえている感じもある。

西:面白いね。いわゆる文芸の世界ってだいたいリベラルで、政治的なスタンスも近い人ばかりだけど、例えば社会に出るとぜんぜん違う世界もあるやん? 意見の違う人らと話すのもめっちゃ大切やと思ってる。

オカヤ:私はいま、新しく人と知り合う機会があんまりないから、Z世代とかと話してみたいね。緊張するけど。

西:うちはいま習いごとをしていて、そこで出会う人らとしゃべるのが、すごく大切な時間。自分と全く違う環境にいる人たちと「好きなもの」が同じ、ていう共通点があるだけで一緒にいるのが、部活みたいで楽しい。ある意味文芸の世界もそうかもしれへんけど。

オカヤ:西さんって、どこへ行っても、「気まずい」と思うことがなさそう。前に、新宿の地下道ですれ違ったことがあったじゃん。そういうときに、すぐパッと「あーオカヤさん!」と声をかけて手を振る、みたいなことができるのが、すごいなと思っていて。

西:え、なんでできへんの? 緊張するってこと?

オカヤ:私は「話しかけていいのかな、悪いのかな」みたいなことをすごく考えちゃうからさ。西さんはそういうときにすごく瞬発力があってすごい。

西:相手にどう思われるかとか「失礼かな?」とかを、考えるのがめんどいねん。若い頃は、例えば、褒められたらすぐ謙遜で返すような「筋肉」があったけど、最近は褒められても「ああー、ありがとうー」ってなってまう。

オカヤ:私はそっちが筋肉だとは思ってなくて、ぱっと話しかけられる西さんには筋力があって、私は筋力がないと思う。

西:たしかに、ちゃう筋肉なのかもな。好きな人ができたら会いたいし、友達になりたいから、「これを言って引かれたらどうしよう」とかを考えなくなった。声をかけんと、話しそびれる方が嫌やねん。いつか死ぬわけやから。

オカヤ:そうか。西さんは「自分で自分の居場所を居心地よくできる力」があるね。私は、どこか「居心地悪くてもいいや」と思ってるから、人と仲良くなれないし、居心地悪いのがそんなに嫌いじゃないのかもしれない……。

西加奈子『わたしに会いたい』

西加奈子
『わたしに会いたい』
2013年11月2日(木)発売
価格:1,540円(税込)
集英社

オカヤイヅミ『雨がしないこと』上・下

オカヤイヅミ
『雨がしないこと』上・下
2013年12月12日(火)発売
価格:各880円(税込)
ビームコミックス(KADOKAWA)

オカヤイヅミ

オカヤイヅミ
漫画家・イラストレーター。独自の感性で日常を切り取った『いろちがい』で2011年にデビュー。著書に『すきまめし』『続・すきまめし』『ごはんの時間割1・2』『ものするひと1・2・3』『みつば通り商店街にて』ほか、人気作家へ理想の「最後の晩餐」について訊ねたエッセイコミック『おあとがよろしいようで』など。2022年『いいとしを』『白木蓮はきれいに散らない』の2作で第26回手塚治虫文化賞短編賞受賞。

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