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細野晴臣、レイ・ハラカミ、サム・ゲンデルを繋ぐ宅録的霊感
『HOSONO HOUSE COVERS』の日本盤LPでは、サム・ゲンデルがカバーした“恋は桃色”とレイ・ハラカミの“終りの季節”がB面の1曲目と2曲目に収録されている。続けて再生すると、ひと繋がりのサウンドスケープのように聴くことができる。音の質感、間の使い方、抑制されたボーカルと揺らぎのあるリズムなどに、似通ったところが見受けられる。
だが、これは結局のところ、『HOSONO HOUSE』が既にそうした要素を孕んでいたのだと言うべきだろう。『HOSONO HOUSE』と『マーキュリック・ダンス』の間にある繋がりを、レイ・ハラカミやサム・ゲンデルは再発見したのだと言い換えることもできる。
カルロス・ニーニョがアンソロジー『Celestial Soul Portrait』(2013年)をコンパイルしたニューエイジのパイオニア、Iasosは、インタビューでこんな発言を残している。
基本的にどのミュージシャンも、自分のそのときの状態を音楽で反映している。つまり、音楽は商人と同じだ。ミュージシャンは音楽を売っているのではなく、音というお皿の上に乗せられた感情を売っているのだ。私は恍惚とした感情を音に乗せて売っているわけだ。
Red Bull Music Academy Daily「Interview: Iasos James Pants talks to the New Age pioneer」より(外部サイトを開く)
まるでブライアン・イーノを思わせるような発言だが、安っぽい癒やしの音楽の総称になってしまったニューエイジを、エモーショナルなものの側に慎重に引き戻したのが、ニューエイジリバイバルだったと思う。
宅録の話にいま一度、戻ろう。細野晴臣であろうが、キース・ジャレットであろうが、宅録でしかできないことの価値をよく知る者たちが残した、無防備で完璧ではない録音は、いまもインスピレーションを与え続けている。録音芸術のもう一つのリアルさを伝えるからだ。それは、フォーマットを変えて、レイ・ハラカミとサム・ゲンデルのカバーにも共通して顕われていることなのだ。

『HOSONO HOUSE COVERS』(LP)

2024年11月6日(水)発売
価格:5,500円(税込)
HHKB-001
[SIDE A]
1. 相合傘 / TOWA TEI
2. 福は内 鬼は外 / John Carroll Kirby feat. The Mizuhara Sisters
3. 住所不定無職低収入 / mei ehara
4. CHOO CHOO ガタゴト / くくく(原田郁子&角銅真実)
5. 冬越え / 安部勇磨
6. 僕は一寸 / Mac DeMarco
[SIDE B]
1. 恋は桃色 / Sam Gendel
2. 終りの季節 / rei harakami
3. 薔薇と野獣 / Cornelius
4. パーティー / SE SO NEON
5. ろっかばいまいべいびい / 矢野顕子
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