3人の予定を合わせるのって、簡単じゃない。でも忙しいときこそ、気の置けない仲間で過ごす時間は大切にしたい。3ヶ月振りに集まったみらんと小原晩、そして新家菜々子。友達と太陽の下で過ごすだけで、こんなに特別な時間になる。
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月曜ぐるり(from 小原晩)
月曜、12時、新宿御苑前駅で待ち合わせた。昨晩、調べていたハンバーガー屋さんへ行って、それぞれハンバーガーを注文する。わたしはアボカドモッツァレラチーズバーガーとオレンジジュース。
ハンバーガーを受けとり、3人で新宿御苑公園の入り口めざして歩く。

月曜日は、休園日だった。
近くのハンバーガー屋さんのことはよくよく調べていったというのに、肝心の新宿御苑はおやすみだった。3人は落ち込んだり、励まし合いながら、近くの公園を探す。探して、探して、3つほど回れども、どの公園にも鳩の大群がいた。
わたしは鳩がすごく苦手なのである。ほんとうにこわいのだ。たとえば、自分の行く道に鳩がいたら、一旦引き返して、横断歩道をわたり、反対側の道を歩いていくほどに、大げさにこわい。
ななこちゃんは、鳩のことがすこしいやそうだった。みらんちゃんはぜんぜん平気そうだった。一度公園のベンチでハンバーガーを食べようとしたら、鳩たちがぱたぱたと寄ってきたので、わたしは2人をベンチに置いてけぼりにして公園の外へ逃げたのだけれど、みらんちゃんは鳩のほうが逃げていくほど勇敢に公園のなかを駆けていた。あれは、すごくかっこよかった。


わたしのせいで、公園でハンバーガーを食べることをあきらめ、ハンバーガー屋さんに戻り、あらためて店内で食べさせてもらった。バンズの白いハンバーガーのパンはすこしあまくて、アボカドはきれいで、お肉はにくにくしくて、とってもおいしかった。

その後、春というよりは冬の終わりという感じのする代々木公園へ行った。下は一面、枯れ葉であった。みらんちゃんがお手洗いに行っている間に売店で缶ビールを買って、飲みつつ待っていたら、でてきたみらんちゃんが「わたしも飲もう」と言って一緒に飲んでくれてうれしかった。

ふたりで寝ころびながら飲んだ。目線のなかに青空があり、すごくねむたかった。


ななこちゃんがひらめいて、枯れ葉を紙吹雪のようにまいてみることになった。
中腰の姿勢からななこちゃんが右手でカメラを構えつつ、左手でわあっと枯れ葉をまく。シャッターを切る。風がふく。ぜんぶこちらへかかる。というのが、なんだかすごく、たのしかった。うまくいかないほうがいつもこころに残るのは、なぜだろう。

わかりやすくてけっこう(from みらん)
自転車を漕いで漕いで、新宿御苑前へ向かう。最近めっきり、電車に乗らなくなった。今日はよく晴れていて気持ちがいい。家から40分くらい、柴田聡子の“愛の休日”を片耳から流していたら着いた。
ハンバーガー屋さんの前で待ち合わせ。なんでかいつも、私が先に着いて、晩ちゃんと菜々子ちゃんがどこかしらで合流するのか、2人揃って笑顔で歩いてくる。晩ちゃんのニヤリ顔も、菜々子ちゃんのほんわり顔も、いつも通り。走ったりすることなく、ゆっくり歩いて近づいてくる2人。久しぶりに見れた光景で、うれしくなる。
久しぶり〜のごあいさつは無しで、すぐに私たちは外に出されているハンバーガーのメニューに釘付けになった。
晩ちゃんは既にアボガドバーガーに決めていたようで、アボガドばっかり口にするから、つられて私もアボガドにする。菜々子ちゃんもつられたはずが、いざ注文するときになって、そこまで口を大きく開けられないかもしれないという理由でテリヤキバーガーに変えていた。
テイクアウトして、新宿御苑で食べようということで、出来上がるまで外で待つ。喋ってるうちにぐんぐんお腹が空いてきた。


ハンバーガーを受け取って、新宿御苑の前まで来た時、「休園日」の文字が目に入る。一瞬で頭のなかにどでかい雲がかかる。3人で、え、うそ、まさか、とか言って調べてみたら月曜は休園日だった。
落ち込みと反省をすぱぱぱっと捉えて処理して、こういうときは誰かがポジに導かなければならない。そんでもって今日は私がその役目を果たす! と心に決める。とりあえずお腹が空いているので、時間との勝負。いちばん近くの公園に行く。人と鳩が多くて公園を変える。つぎ。人も鳩も少ないけどなんだかしっくりこないので変える。つぎ。人も鳩も少なくていい感じのベンチがあるのでここにする。

ハンバーガーを広げる。鳩がどんどん寄ってくる。晩ちゃんと菜々子ちゃんがめげる。晩ちゃんがいなくなる。ダメだダメだダメだ! うぅ。仕方がないので、テイクアウトしたにも関わらず、店内で食べさせてもらう。店員さんがすごく優しく対応してくれて、ほろほろ心がほどけていく。ついにありつけたハンバーガー。さすがに大口で食らいつく。美味しくて美味しくて、あっという間に食べた。


3ヶ月ぶりに会ったので、近況報告がとめどない。楽しいも嬉しいも悲しいもしんどいもぜんぶあって、えらいこっちゃでなんとかみんな生きているんだと思う。

突然、わかりやすく晩ちゃんに眠気が訪れた。せっかくレジャーシートも持ってきているし、代々木公園に移動して、ゆっくりしようということになった。

緑の芝生を想像していたら、秋かしらと思うくらい茶色い代々木公園で、秋っぽい服を着てきた私たちはビールを飲みつつ寝転がる。

菜々子ちゃんはご飯を食べたら元気になるタイプなのか、アクティブに動きまわりながら私と晩ちゃんを撮ってくれた。




ずっとふんわり風が吹いているなか、3人それぞれが気になる人や会ってみたい人の話をしたり、やっぱり眠くてちょっと寝たり、一念発起で立ち上がってわーっとはしゃいだりした。


けっこうバテた。さいごに晩ちゃんが新しいハートのつくり方を教えてくれたけど、なんかむずかしくて、犬とキツネで締めた。


みらん

1999年生まれのシンガーソングライター。
包容力のある歌声と可憐さと鋭さが共存したソングライティングが魅力。2020年に宅録で制作した1stアルバム『帆風』のリリース、その後多数作品をリリースする中、2022年に、曽我部恵一プロデュースのもと 監督:城定秀夫×脚本:今泉力哉、映画『愛なのに』の主題歌を制作し、2ndアルバム『Ducky』をリリース。その後、久米雄介(Special Favorite Music)をプロデューサーに迎え入れ「夏の僕にも」「レモンの木」「好きなように」を配信リリース、フジテレビ「Love music」でも取り上げられ、カルチャーメディアNiEWにて作家・小原晩と交換日記「窓辺に頬杖つきながら」を連載するなど更なる注目を集める中、新曲「天使のキス」を配信/7inchにてリリースした。2023年12月13日には新作アルバム『WATASHIBOSHI』をリリースする。
小原晩(おばらばん)

作家。2022年初のエッセイ集となる『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』を自費出版。2023年「小説すばる」に読切小説「発光しましょう」を発表し、話題になる。 9月に初の商業出版作品として『これが生活なのかしらん』を大和書房から刊行。『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』(実業之日本社)が11月14日発売予定、全国書店で予約受付中。