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あの人と巡る、東京アートスポット

さらさが語る、アートとの関係 学校の外にいた、思春期の理解者

2024.11.7

アートウィーク東京

#PR #ART

11月7日(木)から10日(日)にかけて開催されるイベント『アートウィーク東京(AWT)』。会期中は、「買える展覧会」と銘打たれた「AWT FOCUS」や、映像作品プログラム「AWT VIDEO」など独自の企画が開催され、誰でも利用可能な無料のシャトルバスで、美術館やギャラリーなどの参加施設、プログラム会場を巡ることができます。

53ものAWT参加施設のなかから、ジャスティン・カギアット&ラファエル・デラクルズ『The Toys of Peace』展を開催中のタカ・イシイギャラリーを訪問したのは、シンガーソングライターのさらさ。

音楽活動のアートワークや、ライブ会場の装飾のディレクションを自ら手掛け、アートフェアへの出展経験も持つさらさが、アートに関心を持つようになった経緯や、これまでどのようにアートと触れ合ってきたのかを、展示を鑑賞したあとで、話してもらいました。

2人展に期待する、偶発性から生まれる作品のエネルギー

─AWT参加施設のなかから、さらささんがセレクトしたタカ・イシイギャラリーで、『The Toys of Peace』展を観てきましたが、どうしてこの展示を選んだんですか?

さらさ:展示のメインビジュアルを見て、直感的に気になったんです。2人展だからこそ生まれる偶発性も面白そうだなと思って選びました。

ジャスティン・カギアット&ラファエル・デラクルズ『The Toys of Peace』展のメインビジュアル

─偶発性のある作品が好きですか?

さらさ:そうですね。私も曲を作るときに、トラックはトラックメイカーと作っていて、リファレンスや意見を出したりはしますけど、大体想像もしなかったものが返ってきて。誰かと一緒に作品を作ると、自分だけで完結するよりも、自分の限界を超えた面白いものができる瞬間があるんです。だから音楽以外でも、人と何かを作ることから生まれる偶発性やエネルギーには、きっとパワーがあるんだろうなと思います。

さらさ
湘南出身のシンガーソングライター。音楽活動にだけに留まらず美術作家、アパレルブランドのバイヤー、フォトグラファー、フラダンサーとマルチに、そして自由に活動の場を広げている。悲しみや落ち込みから生まれた音楽のジャンル”ブルース”に影響を受けた自身の造語『ブルージーに生きろ』をテーマに、ネガティブな感情や物事を作品へと昇華する。

─インスタレーション形式の展示で、映像作品の方では、作家自身を投影したキャラクターが制作に追われている様子が表現されているとギャラリーの方がお話されていましたが、すごく共感していましたね。

さらさ:作ることに追われている様子が、めちゃめちゃ私だ、と思いました。1つの物語になっているわけじゃなくて、パッチワーク的にいろんな映像がつながっているような感じでしたけど、共感しすぎて、自分の中で意味が生まれてしまいました。

展示室奥では、10分半ほどの映像が16mmフィルムの映写機で投影されている。

さらさ:ペインティング作品は、シンプルに色合いや絵の雰囲気が好みで。身近な感じがする作品でしたね。

さらさが一番気に入ったという凧のペインティング。東京で作家が出会った様々な素材でできている尾がついている。

日常の中に予想外を潜ませた作品にロマンを感じる

─タカ・イシイギャラリーには来たことがありましたか?

さらさ:初めてでした。それもあって、ピックしたんです。

─普段からギャラリーや美術館にはよく行きますか?

さらさ:女子美(女子美術大学)に通っていたときや、大学を辞めたあと、美学校(※)に通っていた時期は結構行っていました。リサーチして、こんな作家がいるよって友達と教え合うのも楽しくて。音楽活動を始めてからは、あんまり美術館やギャラリーに行っていなかったんですけど、ちょうど最近、友達からおすすめの作家を聞かれて教えていたら、「私、美術好きだな」と思い出して。また展示に足を運びたいと思っていたタイミングでした。

※編注:東京神保町にある1969年創立の絵画、版画、写真、現代美術、作曲、DTM、演劇、ファッション、漫画、デザインの学校。1969年2月に現代思潮社の石井恭二、川仁宏らによって創立され、ロゴデザインは赤瀬川原平が手がけた。

─そのときお友達におすすめした作家はどんな方だったんですか?

さらさ:光岡幸一さんとトモトシさんです。光岡さんはテープで街の中に文字を書いて作品を作っているんですけど、いつもワードチョイスがよくて。多摩川の河川敷に自分でアートセンターを作ったりもしていて、ちょっと泥臭い感じがするところが好きなんです。

さらさ:トモトシさんも、TOMO都市美術館という場所を墨田区でやっているんですけど、街中で特定の動きをすることで、街の人の動きを作るような作品が多かったりします。日常の風景の中に、突然予期せぬ動きや場所が現われることにロマンを感じるのかもしれないです。

岡本太郎と赤瀬川原平は、話し相手が学校にいなかった思春期の理解者

─アートに興味を持つようになったのは、いつからですか?

さらさ:子どもの頃から仮面とか土偶とか、民芸品が好きで。民藝館に行きたがったり、旅行先でもアウトドアよりも陶芸体験をやりたい子どもでした。だから高校生になって、岡本太郎と赤瀬川原平の存在を知ったときは感動したんです。ちょうど思春期で、学校には話が合う子がいないし、誰にもわかってもらえないと感じていたから、「わかってくれる人がいた」って、救われるような気持ちになりました。

─話が合う友人のような存在だったんですね。どういうきっかけで2人のことを知ったんですか?

さらさ:お父さんがサーファーで、カリフォルニアのカルチャーが好きな人だったから『ウッドストック』とか、ヒッピーカルチャーには馴染みがあったんです。それで1960年代のカルチャーやムーブメントついて調べていて、1970年の『大阪万博』の太陽の塔から岡本太郎を知ったり、現代アートの本を読んで、赤瀬川原平ってめっちゃ面白いと思ったりして。それで美術を勉強したいと思い始めて、デッサンの経験もなかったので、受験にデッサンがない学科を探しました。

─さらささんは女子美ではアートプロデュースを学んでいたんですよね。

さらさ:ただ、1年ぐらいで行かなくなりました。大学を辞めてからは、地元にある武蔵野美術大学出身の女性がやっている現代アートの私塾で、油絵とか建築史とか美術史を習って、その後は美学校の「現代アートの勝手口」というコースにも半年くらい通っていました。

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