こうの史代の漫画家生活30周年を記念した展覧会が石川・金沢21世紀美術館で5月25日(日)まで開催されている。
1968年広島市生まれのこうの史代は、1995年に『街角花だより』の連載で漫画家デビュー。『夕凪の街 桜の国』は、第9回手塚治虫文化賞新生賞、第8回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞受賞を受賞し、映画化やドラマ化もされた話題作となった。広島の軍都・呉の戦災を描いた『この世界の片隅に』は、第13回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞。ドラマ化、舞台化されたほか、片渕須直監督によってアニメ化された映画は3年以上にわたる異例のロングランヒットを記録した。
『漫画家生活30周年 こうの史代展 鳥がとび、ウサギもはねて、花ゆれて、走ってこけて、長い道のり』と題された同展は、こうの史代の過去最大規模の展覧会。初めてデビューから現在までを網羅した回顧展で、500枚以上の漫画原画、膨大な挿絵原画、絵本原画、作品のコンテや脚本、ブログ「こうのの日々」に登場するスケッチブック、制作風景を記録した初公開の映像などが展示されている。また、デビュー前の原稿や、高校生の頃に制作した漫画の原画も展示され、こうの史代の画業のすべてが詰まった内容になっている。



原画は、連載作品は1話単位、短編は全ページを基本に展示され、ストーリーを分断しない構成となっていることも特徴。こうの史代は初期からアシスタントを起用せず、着彩も本人が担当しており、各単行本のカバーのカラー原画の展示も見どころとなる。展示の監修は小説家の福永信が担当。コメントも発表されている。
こうの史代は、今年で漫画家生活30周年を迎えます。
福永信(本展監修者 / 小説家)
こうの史代の漫画は、デビューの最初から、キャラクターも、背景も、等しく愛らしいタッチで描かれています。それは4コマ漫画でも、ほのぼのショートストーリーでも、神話ものでも、戦争ものでも変わりません。
戦争ものだから急にシリアスに、というふうに描くことがないのです。これまでの作風の流れを切断しないことで、すべてがつながっている、読者はそう感じます。
見た目は愛らしいけれども、力強さ、柔軟さ、しぶとさがその線には宿っています。
こうの漫画は、愛らしいタッチのまま、実に多彩です。どれをとっても、似た作品がありません。
ひとつの作品を描くごとに、新しい、まだ見たことのない漫画表現の可能性へ向けて、一歩ずつ歩き続けているからです。
こうの史代のいる場所から見ると、見慣れたはずの「漫画」という表現が、新鮮な姿に見えてきます。ほら、まだこんなに描くことがあるよ、というように。
そう、決してこうの史代は、一つや二つの作品で、象徴できる漫画家ではないのです。
一人の漫画家として、こうの史代が歩いてきたすべての道のりを、この展覧会ではたどります。
本展は、一人で見に来たとしても、きっとさびしくないでしょう。それは、彼女のあたたかい、友達のような目線が、原画を見るあなたと見つめ合うからです。
展示スペースの最後には、こうの史代が来館し、金沢を歩き、感じたことを、「あとがき」として展示。5月20日(火)と21日(水)には会場内で展示会場では、こうの史代によるライブペインティングも実施される。
こうの史代の仕事の全貌がわかる図録兼書籍『こうの史代 鳥がとび、ウサギもはねて、花ゆれて、走ってこけて、長い道のり』も刊行されており、デビューから現在までの原稿 / 画稿をアンソロジー形式で収録。『街角花だより』『長い道』『こっこさん』 『かっぱのねね子』『ぼおるぺん古事記』などが140ページ以上にわたり紹介されている。展示原画の数々に加え、ロングインタビュー、デビュー前の未発表作品、森下達による詳細な解題のほか、初めて作成されるこうの史代年譜なども収められており、こうの史代が漫画家として歩んできた30年を豊富なテキストで辿る一冊となっている。
同展は金沢での開催後、全国を巡回予定。6月8日(日)〜7月27日(日)には京都・福知山市佐藤太清記念美術館、8月2日(土)〜10月2日(木)には千葉・佐倉市立美術館で開催される。
『漫画家生活30周年 こうの史代展 鳥がとび、ウサギもはねて、花ゆれて、走ってこけて、長い道のり』
会期:2025年5月2日(金)~5月25日(日)※会期中無休
開場時間:午前10時~午後6時(入場は閉場の30分前まで、最終日は午後3時閉場)
会場:金沢21世紀美術館 市民ギャラリーB(金沢市広坂1-2-1)
主催:北陸中日新聞、石川テレビ放送
共催:金沢21世紀美術館[(公財)金沢芸術創造財団]
後援:石川県、金沢市、金沢市教育委員会、いしかわ結婚・子育て支援財団
監修:福永信
協力:呉市立美術館、コアミックス、朝日新聞出版、日本文芸社、平凡社
企画:青幻舎プロモーション
特別協賛:東海東京証券
■こうの史代 ライブペインティング
日程:5月3日(土・祝)、20日(火)、21日(水)
時間:各11時ごろから描いている予定です。少し早かったり、逆に遅く描き始めたりするかも。休憩もするのでいないときもあります。
会場:本展会場内
『こうの史代 鳥がとび、ウサギもはねて、花ゆれて、走ってこけて、長い道のり』
定価: 3,520円(本体3,200円)
著者: こうの史代
構成・執筆: 福永信
執筆: 森下達
アートディレクション: 佐々木暁
判型: A5変
総頁: 312頁
製本: 並製
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