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テレビだからこそできる表現
大森プロデューサーが手掛けたこれまでの作品の面白さは、そういったモキュメンタリーの手法を、テレビの構造に落とし込んだ点だ。
注目を浴びるきっかけとなった第1作目『Aマッソのがんばれ奥様ッソ!〜芸能界のお節介奥様派遣します〜』は、芸能人が悩める奥様を助ける形式の番組を模したフェイクドキュメンタリー。移住先の村がどこか異様だったり、密着した大家族に秘密があったり、徐々に裏にある不穏な物語が見えてくる。『このテープもってないですか?』でも、テレビ局が失ったかつての番組のテープを視聴者から提供してもらうという体裁を取りながら、次第に番組の秩序が失われていく様子が映し出される。
このように一般的にホラーとは離れたバラエティという体裁に怪異を忍び込ませることによって、現実を侵食していくような不穏さが演出される。これは、テレビだからこそ実現できる表現だ。
また、番組に関わる細部まで演出を施している点もすばらしい。例えば、『このテープもってないですか?』では、番組のSNS宣伝という今では当たり前に見られる場所に、ホラー要素を散りばめることによって、よりリアルに接近した怖さを生み出している。