2月9日(金)に公開された映画『夜明けのすべて』(英題:All the Long Nights)が、『第74回ベルリン国際映画祭』で現地時間の2月21日(水)にインターナショナルプレミア上映された。
新しい視点を含む革新的な作品を集め、強い個性や多様性のある物語に注目する「フォーラム部門」に選出された同作。パニック障害を抱えたことで人生が一変した「山添くん」を演じる松村北斗、月に一度のPMS(月経前症候群)で自らの感情をコントロールできなくなる「藤沢さん」を演じる上白石萌音、監督を務めた三宅唱が現地でのメディア取材などに応じた。
はじめに現地映画館・Zoo Palastにあるレッドカーペットを訪れた3名。声優として出演した『すずめの戸締まり』が前回の『ベルリン国際映画祭』に招待されながらも参加できなかった松村は、「リベンジの気持ちもあります!」と意気込みを語り、「日本の東京の小さな街で撮影した映画なので、渡航してようやくこの(ベルリンの)街の風景を見て、やっと今世界に届いているんだと感動し始めています」とコメント。上白石は「まさか、人生の中で参加できると思っていなかった場所に、自分が大好きで大切に思っている作品を通して来ることができたのは何より嬉しいです」と話した。
18世紀末建造の劇場・Delphi Filmpalastで行われたインターナショナルプレミア上映では、上映前舞台挨拶を開催。松村と上白石による「Guten Abend!(グーテン・アーベント=こんばんは)」というドイツ語や英語での挨拶を交えて、670席が満席となった会場に応えた。
本編上映後には観客とのQ&Aも実施。ふたりがPMSやパニック障害というそれぞれの「生きづらさ」を抱えた男女を演じたことから、「これらのテーマに関心を持ったからこの映画に参加したのか」という質問に対して、「この映画を通して全てを知ることは不可能だけれど、一歩、半歩でもその症状に対して寄り添ってくれたらいいな、という思いは強く持ちながら演じていました」と松村が回答した。上白石は「日本では女性の生理の話を男性とはしづらいのですが、それはこちらも一緒ですか?」と観客に逆質問。「そうでもない」との反応を受けて「日本もそうなるといいな、そういうきっかけにこの映画がなればいいな、と思っています」と語るなどし、終始和やかな雰囲気でのやりとりとなった。
プレミア上映終了後には3名の囲み取材が行われた。三宅は「上映後、お客さんから力強い拍手をいただき感激しましたし、2人のキャラクター(山添くんと藤沢さん)を友達みたいに愛して観てくれていたんだと感じました」と語り、松村は「この映画は、いろんな人の人生がそのまま映し出されている映画なのですが、人生のしんどいこともと笑えることも、お客さんが一緒になって感じてくれている空気が伝わってきました」、上白石は「会場の反応が鮮やかで本当にびっくりしました」と振り返った。
初めて『ベルリン国際映画祭』に参加した松村と上白石。「お客さんの観方がすごくプロだなと思い、大変心地よかったです」と松村、「国籍や人種が違う色々な方がいましたが、みんな同じところで笑ったり、張り詰めたりしていて、文化や言葉を超えた共通の何かがあるんだな、と感じました」と上白石が感想を述懐。Q&Aの感想を聞かれると、「もっとこの映画のことを知りたいんだな、という質問ばかりで、さらにこの映画への自信が湧きました」と松村、上白石は「たくさん手が挙がっていて嬉しかったですし、本当にみんなに愛されている映画祭なんだと感じました」とコメントした。
一方で、2019年の『きみの鳥はうたえる』(フォーラム部門)、2022年の『ケイコ 目を澄ませて』(エンカウンターズ部門)に続き、監督作品が3回目の『ベルリン国際映画祭』に選出された三宅。「過去2作より今作の方が、『日本』というものを客観的に見る経験になった気がします。この映画がPMSやパニック障害、あるいはそれ以外のいろんな苦しみを抱えながら生きている人たちの物語でありつつも、同時に登場人物たちは『日本』という目に見えない縛りの中で生きているな、ということを、海外の方の反応を見たからこそ感じた部分はありました」と、過去の選出を踏まえて今回の感想を述べた。
瀬尾まいこの同名小説を原作とする同作。PMSで自らの感情をコントロールできなくなる藤沢さんとパニック障害で人生が一変した山添くんが、職場の同僚として過ごす中で互いの「生きづらさ」を知り、「自分のことはどうにもならなくても、相手を助けられることはある」と支え合う日常を描く。日本では公開初週の3連休で、動員13万人・興行収入1.8億円を記録。韓国、台湾、香港での上映も決定している。
夜明けのすべて
■コピーライト:©瀬尾まいこ/2024「夜明けのすべて」製作委員会
■配給:バンダイナムコフィルムワークス=アスミック・エース
出演:
松村北斗 上白石萌音
渋川清彦 芋生悠 藤間爽子 久保田磨希 足立智充
りょう 光石研
原作:瀬尾まいこ『夜明けのすべて』(水鈴社/文春文庫 刊)
監督:三宅唱
脚本:和田清人 三宅唱
音楽:Hi’Spec
製作:「夜明けのすべて」 製作委員会
企画・制作:ホリプロ
制作プロダクション:ザフール
配給・宣伝:バンダイナムコフィルムワークス=アスミック・エース
■公式サイト:yoakenosubete-movie.asmik-ace.co.jp
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