第169回芥川賞と直木賞が発表された。芥川賞は、市川沙央の『ハンチバック』、直木賞は永井紗耶子の『木挽町のあだ討ち』と垣根涼介の『極楽征夷大将軍』が受賞した。
『ハンチバック』は、先天性の遺伝性筋疾患のために背骨が湾曲しており、電動車椅子と人工呼吸器を使い、裕福な両親が遺したグループホームから、ほとんど外に出ない生活を送っている、井沢釈華が主人公の作品。同作の著者である市川沙央は、早稲田大学人間科学部出身。自身も、生まれつき筋力の低下や呼吸障害が伴う、筋疾患先天性ミオパチーによる症候性側弯症および人工呼吸器使用・電動車椅子の当事者である。作家デビューを果たした同作で、芥川賞を受賞した。
『木挽町のあだ討ち』は、江戸時代を舞台にした時代小説。雪が降る夜に芝居小屋の近くで起きた仇討ちを巡る作品となっている。著者の永井紗耶子は神奈川県出身で2010年に作家デビューした歴史小説家。第35回山本周五郎賞と合わせて史上3人目となるダブル受賞となった。
『極楽征夷大将軍』は室町幕府の初代将軍でありながら、謎に包まれている足利尊氏の秘密を解き明かす歴史群像劇。著者の垣根涼介は、長崎県出身。2000年に『午前三時のルースター』で第17回サントリーミステリー大賞と読者賞をダブル受賞しデビューした。