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バンドという関係性が教えてくれた、平和と秩序
―今回のアルバム、音の立体感や展開の想像のつかなさがすごく刺激的で。受け手の「聴く」という行為に強く訴えかけてくるアルバムだと思ったんです。今までで最も、聴き手に何かを問いかけているアルバムだと思ったんですけど、そういう部分は意識されていましたか?
本村:ミックス作業では、その意識はあったと思いますね。堂々と問題提起をしたいというより、ちょっとしたイタズラ心的な感じですけど。聴いた人に「この違和感はなんだろう?」と思ってもらえたら嬉しいなっていう、ささやかな問いかけではありますけど、それは間違いなくあります。イタルはどう?
内村:問いかけ、うーん……。でも、「面白いことをやる」っていうのは、一番の問いかけではあると思う。メッセージとして書き表せるものではなくても、自由に、みんなでひとつの作品を作り上げるっていう、その行為自体に「問い」が含まれているんじゃないかなと思います。見えないものを作って、それを聴いてもらうって、すごいことだから。
本村:たしかに、バンドをやっていること自体、今の時代的には非効率的な行いではあるけど、そこに年々こだわりたくなってきている自分はいますね。人がコミュニティを形成して、ひとつのものを作り上げることの面白さ……それを自分たちが提示しているかどうかはわからないけど、そういうことをやる人がもっと増えたらいいなと思うし。

内村:それが、平和とか愛のメッセージにつながるから。
本村:平和や秩序の感覚って、自分は少なくともバンドを通して学んできたことではあるんですよね。これはいろんな人が言い方を変えて言ってきたことではあると思うけど、バンドには、いわゆる友達とも家族とも恋人ともちょっと違う距離感があって。それは僕にとって、義務教育の時期に想像していた人間関係の在り方の枠の外にあるものだったんですよ。「こういう関係って、この世界にあるんだ!」と思うような感覚。それがバンドにはあるんですよね。
内村:不思議だよね。音楽って実体がないしさ。それをみんなで作れるのが、バンドのよさだよね。
