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広瀬すず達に等しく降る雨。『ゆきてかへらぬ』に見る脚本家 田中陽造の「水」の美学

2025.2.21

#MOVIE

日本映画史に刻まれる田中陽造の作品群

今回の脚本も収録された『ゆきてかへらぬ 田中陽造自選シナリオ集』(国書刊行会)が、映画公開とほぼ時を同じくして刊行されるというから、田中をめぐる謎はこれからゆっくりと解かれるであろうし、上記したようにさまざまな関心を抱く観客にとっても、有力な手がかりになるはずだ。

そのうえでなお、謎は残り続けるだろう。田中が1960年代後半から、60年近くの月日のなかで私たちの世界に満たしてきた霧は、そんなにすぐには晴れないほど濃い。そして、あたり一面の霧のなかでさまようなかに、『ゆきてかへらぬ』をめぐるヒントもある。

往年の映画ファンであれば、田中陽造の名前は、至るところで目にしてきているものだ。鈴木清順監督の大正浪漫三部作『ツィゴイネルワイゼン』(1980年)、『陽炎座』(1981年)、『夢二』(1991年)や、相米慎二監督の『セーラー服と機関銃』(1981年)、『魚影の群れ』(1983年)、2024年12月より4Kリマスター版が全国順次公開中の『夏の庭The Friends』(1985年)、そして根岸監督の『ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~』(2009年、第64回毎日映画コンクール脚本賞受賞作)などの、日本映画史に刻まれた作品群。

『夏の庭The Friends』4Kリマスター版は、現在全国で順次公開中。4月19日(土)からは下高井戸シネマでの上映が予定されている。

あるいは曽根中生監督とのタッグを中心にしつつ、にっかつロマンポルノを支えた功労者としても知られる。曽根×田中タッグにはロマンポルノ以外にも、あまりにも荒唐無稽で観る側の腹がよじれる『嗚呼!!花の応援団』シリーズ(1976~77年)がある。筆者がイチオシしたい作品だ。

とはいえ、こうして挙げてきた脚本作品のラインナップからしても、その作風を一言でいいあらわすことが、非常に難しいことが痛感される。

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