風変わりなお菓子教室を舞台にしたスイーツ・ヒューマンドラマ『バニラな毎日』(NHK総合)がいよいよ最終回を迎える。
美味しそうなスイーツが、毎週月曜から木曜の夜の癒しともなっていた本作。
店主兼パティシエの白井葵(蓮佛美沙子)と料理研究家・佐渡谷真奈美(永作博美)が営む“たった一人のためのお菓子教室”は、実はカウンセリング患者のための「サード・プレイス」であったが、本作が、自分にとっての心のサード・プレイスになった人も少なくないだろう。
そんな『バニラな毎日』のこれまでについて、主人公のひとりである佐渡谷の「関西のおばちゃんマインド」にフォーカスしながら、毎クール必ず20本以上は視聴するドラマウォッチャー・明日菜子がレビューする。
※本記事にはドラマの内容に関する記述が含まれます。あらかじめご了承下さい。
INDEX
今こそ私たちに必要な“関西のおばちゃんマインド”

平成生まれの主人公・結(橋本環奈)が、日本の朝をギャルマインドで「アゲ〜!」する朝ドラ『おむすび』(NHK総合)が放送されている今こそ注目すべきは“関西のおばちゃん”ではないだろうか。対人関係が希薄になりがちな時代だからこそ、なりふり構わず介入してくる“関西のおばちゃんマインド”が、私たちには必要なのではないか。夜ドラ『バニラな毎日』にて、台風のごとく現れたおばちゃん・佐渡谷真奈美(永作博美)がどんどん周りをエンパワメントする姿に、そんなことを思った。
INDEX
ハッピーエンドに一歩ずつ近づいていく葵たちの物語

いよいよ最終週に入った『バニラな毎日』は、大阪の小さな洋菓子店「パティスリー・ベル・ブランシュ」で開かれる“たった一人のためのお菓子教室”を描くドラマだ。料理研究家・佐渡谷の強引さに負け、店主兼パティシエの白井葵(蓮佛美沙子)は、しぶしぶ手伝うはめになるが、そんな不思議なお菓子教室の正体は、カウンセリング患者のための「サード・プレイス」、家庭でも職場でも学校でもない“第三の場所”だった。教室で作られるタルトタタン、オペラ、モンブラン・フロマージュ、イートンメス、パウンドケーキ、フレジエーーテレビ越しに香りまでしてくるような色とりどりのお菓子たちも、本作の主役の一人だ。
『バニラな毎日』は賀十つばさの同名小説を原作とし、『PICU 小児集中治療室』(フジテレビ系)やNHKスペシャル『アナウンサーたちの戦争』などの倉光泰子が脚本を担当している。夜にひっそりと放送されているが、『おかえりモネ』(NHK総合)の一木正恵や『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)の安達もじりらが演出を手がける意欲作でもある。そして、蓮佛美沙子と永作博美をはじめとするキャストたちの芝居がとにかく素晴らしく、毎話15分とは思えないほどの見応えがあるのだ。
そんな『バニラな毎日』がもうすぐ最終回を迎えてしまうのは、ただただ寂しい。しかしそれは、葵たちの物語が、ハッピーエンドに一歩ずつ近づいていることも意味しているのだろう。