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ハッピーエンドに一歩ずつ近づいていく葵たちの物語

いよいよ最終週に入った『バニラな毎日』は、大阪の小さな洋菓子店「パティスリー・ベル・ブランシュ」で開かれる“たった一人のためのお菓子教室”を描くドラマだ。料理研究家・佐渡谷の強引さに負け、店主兼パティシエの白井葵(蓮佛美沙子)は、しぶしぶ手伝うはめになるが、そんな不思議なお菓子教室の正体は、カウンセリング患者のための「サード・プレイス」、家庭でも職場でも学校でもない“第三の場所”だった。教室で作られるタルトタタン、オペラ、モンブラン・フロマージュ、イートンメス、パウンドケーキ、フレジエーーテレビ越しに香りまでしてくるような色とりどりのお菓子たちも、本作の主役の一人だ。
『バニラな毎日』は賀十つばさの同名小説を原作とし、『PICU 小児集中治療室』(フジテレビ系)やNHKスペシャル『アナウンサーたちの戦争』などの倉光泰子が脚本を担当している。夜にひっそりと放送されているが、『おかえりモネ』(NHK総合)の一木正恵や『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)の安達もじりらが演出を手がける意欲作でもある。そして、蓮佛美沙子と永作博美をはじめとするキャストたちの芝居がとにかく素晴らしく、毎話15分とは思えないほどの見応えがあるのだ。
そんな『バニラな毎日』がもうすぐ最終回を迎えてしまうのは、ただただ寂しい。しかしそれは、葵たちの物語が、ハッピーエンドに一歩ずつ近づいていることも意味しているのだろう。