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異国の地でハグしてるような気持ちに
山口:俺が今日ここに来たのはさ、カトマンズから帰ってきたあとの古舘がどうなってるのか、それを知りたかったからなんだよ。
でもこうやって会って話した感じ、なんにも変わってねえなって思ってる(笑)。もちろん旅してる間の表情とかインスタの文章とか、本を読んでても、覚醒したのかなって、変わってきてる感覚はあったんだよ。俺らが到達できないような、旅の中でしか感じられないものを感じてきたのかもなって。
でもさ……旅から帰ってきましたって挨拶くらいはしろよ! これでも出資者なんだから! しかもきっちり使い込んでくるし(今回の旅費はすべて山口のポケットマネー)。
古舘:本当にそうなんですよね、きっちり使い込んでしまいまして。もちろん、高級ホテルに泊まったり贅沢三昧したりってことじゃないですよ。
山口:そんなことはわかってるよ(笑)。別にお金の使い方とかどうでもいいのよ。
古舘:挨拶に行かなかった理由は、ちゃんと自分の中ではあるんですよ。旅の前半、プノンペンの夜明けを見ながら、「なんで俺はこんなことしてんだ」って、すごくわがままな、自分勝手な怒りに染まっていたんです。しかも自分の人生を棚に上げて、「これは一郎さんのせいだ」って。
でも1ヶ月かけてカトマンズに着いた時、自分でもびっくりするくらい、インスタや本には書ききれないくらい、ものすごい感動があったんです。あの瞬間、自分の中で一郎さんとの距離がすごく縮まった感じがして。
10年の関係を振り返った時に、ずっと「お前は本当に他人行儀だ」「嘘ばっかついてる」って言われてたことが、ちょっとピンと来てなかったんですよね。
というのも僕、一郎さんの前では結構むき出しだと思ってたから。でもカトマンズで「確かに」って思ったんです。いままで劣等感を抱えた後輩キャラで、社会の「縦社会」みたいなフォーマットに当てはめて、根っこの部分で一郎さんと刺し違えてなかったんだってことに気づいて。そのときようやく、心の底から繋がった感覚がありました。異国の地でひとり踊るような気持ちで、一郎さんとハグしてるような気持ちになってました。

山口:なんでそれをいま言うんだよ。帰ってきてすぐ言わなきゃダメじゃん(笑)!
古舘:わかってます。これは言えば言うほどヤバいやつになっちゃうんですけど……僕の中ではあの日(2024年3月30日頃)から、一郎さんとはどこにいても、離れていても、繋がってるって勝手に思ってたんです。一郎さんは僕の中にいるって。
山口:お前はほんとに……人たらしだよ(笑)。どんなに失敗しても、どんなにヤバいこと言っても、なぜか許されちゃう。それはもう才能だよ。ミュージシャンとしても、役者としても、作家としても、すごい優秀な才能なのよ。
古舘:オオカミ少年って、最後には本当のことを言うじゃないですか。僕もいままでは一郎さんに対して「オオカミ来たよ」って嘘ついてたかもしれないですけど、カトマンズの僕はマジだったんですよ。
ほんとに旅の間、ずっと考えてたんです。「一郎さんって、どんな人なんだろう?」って。僕の人生で、すごく特殊で特別な関係性の方なので。それで気づいたんですけど、一郎さんって、すべてが「逆」の人なんですよ。嬉しい時に僕を叱ってくれたり、僕がダメダメでもうどうしようもない時にめっちゃ褒めてくれたり。普通の先輩後輩の関係とは真逆。昔の浅草芸人の師弟関係の本を読むと、まさに僕と一郎さんの話だなって思うくらい。
山口:ほんと物書きの才能あるわ(笑)。