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皮肉とメタファーの裏で、TESTSETの音と言葉が打ち出すイメージ
―音楽的な変化ももちろん感じつつ、EPは都市、アルバムは自然というアートワークの対比が面白いなと思いました。
LEO:今回この写真にした一番の理由は、“Sing City”で描写されている風景だからなんです。東京の近郊外。

LEO:歌詞は、まず日本語で書いてみようと思って自然と出てきた感じなんですけど、特に社会に対してどうというのはなくて、私の心境、自分の日常のスクショみたいな感じです。そういうセンチメンタルな歌だから、それに合う写真を探して。何でもない日常というか、そこがいいなと。
ー“Sing City”は当初「TESTSETには合わないかも」と思いつつ制作を進めたそうですね。
LEO:そうですね。でもTESTSETの新たな側面が出せるかもしれないと思ってやってみたら、いい感じになりました。トム・ペティとDepeche Modeが合わさった感じ(笑)。
永井:1990年代のU2の感じもあるよね。“Sing City”はLEOくんのシグネチャをすごく感じるんだけど、制作が進んでいろんな要素が肉付けされていくうち、だんだんバンドとしての命を持っていった。今回のEPは全曲がそうで、メンバーそれぞれがもともと持っているものがより強く出ているんだけど、でもバラバラな印象を感じさせないものになっていると思います。
ー永井さんが詞曲とボーカルを担当した“Yume No Ato”はもともとどのようなイメージだったのでしょうか?
LEO:Cocteau TwinsとThe Cureみたいな感じですよね(笑)。あと全然違うんだけど、これを聴くとなぜかR.E.M.の曲が思い浮かぶんですよ。すごいポップで軽やかで楽しげなんだけど、中身は絶望的に悲しい、みたいな。R.E.M.はそういう曲が結構あるじゃないですか。
永井:“Shiny Happy People”とかね。
ー曲調的には1980年代のネオアコ感がある頃のR.E.M.ですね。
LEO:それも含めそうですね。私、たぶんTESTSETの曲のなかで一番よく聴いてます。
永井:そうなんだ。僕はギタリストなので、僕の曲はギターで作ったのが見えやすいものが多くて、ネオアコ感とか、The Cureっぽさとかもコードワークによるところが大きいと思います。その上でメンバーそれぞれのカラーが混ざって、TESTSETらしい感じになっているなと。
ー歌詞は強い喪失感が感じられますが、どんなモチーフがあるのでしょうか?
永井:特定はあえて避けますけど、いろんな喪失がありましたよね。結果的にはTESTSETという大切な財産を得ることができて、それが何よりの救いなんですけど、トータルではここ数年は失ったもののほうが大きい。僕はすごくペシミストなんですよ。喋っているときは逆に気持ちをブーストしているけど、普段は暗いことしか考えてないから。
LEO:そうなんだ? ピエロなの?
永井:ピエロとはまた違うな(笑)。だからといって死にたいとはまったく思わないんですけど、心の底から楽しい瞬間はすごく限られる。やっぱり基本的に暗くて重い空気感ですよ、ここ数年は。世の中を代表してそんなことを言う筋合いはないけど、それが歌で表現できるのであれば隠さないでもいいかなとは思う。
ただあまりにストレートな表現は好きではなくて、さっきのR.E.M.の話みたいに、めちゃめちゃテンションが高いけど暗いことを歌ってるようなバンドが昔から好きだったから、自分もそうありたいって無意識で思っているんじゃないかな。
