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菅田将暉主演映画『サンセット・サンライズ』レビュー 笑いと涙の田舎再生コメディ

2025.1.17

#MOVIE

空き家から見える過去と、感情が極みに達する「芋煮会」

クスクス笑える場面が多い一方、そのどこかに「悲しい過去」が見えることも重要だ。例えば、言動がやや乱暴な地元の男性たちは「モモちゃん(井上真央演じる大家の百香)の幸せを祈る会」を結成しており、彼らが「実はめちゃくちゃいい人たち」とわかっていく過程は「ギャップ」も含めて楽しい。

しかし、彼らがなぜその会を結成したのか、そもそもなぜ百香は一軒家を破格で貸し出したのか……とさまざまな想像がおよぶだろう。これまで楽しいことばかりを考えていた主人公の晋作も、そのことと向き合わざるを得なくなる。

それからは、予想外の事態もあって晋作は「空き家活用プロジェクト」に乗り出すことになる。住民たちも巻き込んでの試行錯誤は、なるほど現実にもある地方の空き家問題をビジネスにしていく過程として興味深く、そこでも空き家の持ち主の過去が見えてきて、単に誰かに空き家を貸し出せば万事解決、という単純なものではないこともわかっていく。

家には住む人の記憶が強く残るという当たり前の事実を再確認できるとともに、劇中の空き家活用プロジェクト、もしくは誰かのためになる仕事は、「悲しい過去は決してなくならなくても、それでも前向きに生きていくための方法」として肯定するべきものに見えてくる。

そして、キャラクターそれぞれの過去と未来に対する複雑な思いは、東北の風物詩である「芋煮会」の場面で極に達する。岸善幸監督は、河原で感情をぶちまけあう表情を捉えるために、じっくり2日間をかけて長回しで撮影したという。そのかいあっての、これまで描かれてきたキャラクターそれぞれのおかしみと切なさが同時に存在している、まさに「泣き笑い」というキャッチコピーにふさわしいクライマックスになっていたのだ。

芋煮会のシーン

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