INDEX
面白い発想とか面白い出来事っていうのは、お金と関係ないところから生まれる
―ここまでレーベルの話をメインにお伺いしましたが、最後にアーティストとしての側面でもお伺いすると、先日ソロアルバムが2枚同時にリリースされました。2020年以降のサニーデイ・サービスはまた新たなフェーズに突入していると思いますが、その一方で、ソロというアウトプットは今の曽我部さんにとってどんな場所になっていると言えますか?
曽我部:ソロとサニーデイをあんまり区別してないっていうのはあるんですけど、サニーデイはブランドとして看板があるもので、ソロは何でもありというか、日々生まれてくる音楽なので、書き散らかしてる感じ。サニーデイは整理して、サニーデイというもののイメージの中でつくっていきたいなっていうのがあって、それこそもう30年ぐらいずっと聴いてくれて、ファンでいてくれてる人もいれば、最近ライブに来てくれるようになった若い子たちもいたりとかして、「じゃあ次はこういう曲を聴かせたい」っていうのをすごい選んで出すんですけど、ソロはもう何でもいいんですよ。ぽろーんって弾いた一音だけでも俺の音楽だから、それで出しちゃう。今回の2枚っていうのは、そういうものがワッと連続で出てきたので、最初は1枚だけ出そうと思ってたんですけど、その後にまた構想してたものがすぐにできたから、じゃあ一緒に出しちゃうかって。
溜めて醸造させるというか、寝かせて表現するのはあんまり良くなくて、ソロに関しては出てきたものはどんどん出したいなと思う。自分の音楽っていうのは、自分が生きてる証だから。

ーあえてお伺いしますが、アーティストとしての自分とレーベルの経営者としての自分はどうバランスを取っていると言えますか?
曽我部:俺が「経営」をできてたらいいんですけど、あんまり「経営」をしてる感じがないんです。「あれ、もうお金ないの?」みたいになってるから。それを全部把握して、自分でやってる人が経営者だと思うんだけど、俺はそうではないので。
自分のことを自分でやる。今日食べる分の食費を自分で稼ぐ。そういう原始的な経営のあり方ならやってるかもしれない。でも10年後の会社をこういうふうにしようとかっていうのは絶対考えないようにしてて、「来年どうなってるかわかんないとこがいいんじゃん」とかどっかで思ってるから、本来の資本主義的な経営活動ではないですよ。食いぶちを日々稼ぐっていうだけの話。
―お金を軸に物事を考えていないということですよね。
曽我部:面白い発想とか面白い出来事っていうのは、お金と関係ないところから生まれるっていう認識があって。それをまとめてお金にする人がその後必ず出てくるけど、面白いものってまずはストリートからしか出てこない。お金のないやつらがお金のことを全然考えずに産み出したものが面白いわけで、代理店の人たちがみんなでミーティングして産むものでは絶対にない。どこか僕らの知らないところで知らない人たちが一番面白いことをやるんです。だから、ROSEの一番最初はそうだったかもしれない。目標とか全然何も考えてなかったからね。ただ「あいつらの世話になるのは嫌だな」って言って、大きい会社を離れたっていうだけの話だから。最初はなんでもそうだと思う。
―だからこそ、まずは自分でやってみることが大事ですよね。
曽我部:言われた仕事を一生懸命やることが生きがいの人もいっぱいいるし、どっちがいいとかは全然ないんだけど、俺はただ生きててもつまんないなって思うから、面白いものがある方に行こうかっていうぐらいの話で。まあ、みんな何でもやってみればいいんじゃないかなと思う。結局どれが正しいということはないからね。
