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「家族のケア」と「自分らしく自由に生きたい」の間の葛藤

第5話から第8話では、それぞれが抱える「ケア」を巡る問題も丁寧に描かれていた。第5話で、司が家族を持とうとしない理由には、幼少期からヤングケアラーとして介護と家事に追われていた過去が関係していたことが判明した。「自由でいないと自分が保てない」司も、「同居するといろいろ気を遣うから、気ままっていうわけにはいかない」から息子夫婦との同居を断った“ウズラさん”こと志穂美春子(宮崎美子)も、実家での食生活における価値観の相違に耐えられなくなり、団地を出ると決意した反橋も、根底にあるのは、誰かが担わなければならない「家族のケア」の問題と、「自分らしく自由に生きたい」と願う個人的な気持ちの間における葛藤である。
そして第8話で描かれたのは、高齢である鈴が、変わらず今まで通りずっと団地で暮らし続けたいと思っても、誰かのケアなしでは叶わないのだという残酷な現実だった。鈴が抱えるその切なさは、さとこの母・惠子(朝加真由美)が娘に望んでしまう多くの可能性を、「食べられないご馳走、わざわざ目の前に並べられているみたい」と表現した、さとこの切なさと重なり合う。