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祐子と義光とソラと坂本の選択は「自己責任」なのか

もう一つ、『3000万』を見ていると「自己責任」というワードが頭をよぎる。たとえば、第7話。義光と口論になった祐子が「俺との生活がそんなに不満だった?」という義光からの問いかけに対し、こんなことをつぶやく。
「あなたと結婚するって決めたの私だから。自業自得」。
ミュージシャンとしての夢を追いかける義光との結婚生活。そして、3000万円にまつわる一連の出来事――これらは祐子自身の「自己責任」とも言えるのかもしれない。ソラや坂本が窮地に陥ったのも、すべて彼らが自ら選び、進んできた道の結果だ。
だが、それらをすべて「あなたの自己責任だから」と片付けてしまうことに、私はどうしてもわずかな抵抗を覚える。一個人に責任をすべて押し付けるには、この世界はあまりにも複雑で、ふとした瞬間に足元をすくわれる仕組みになってしまった気がするから。最初に3000万円を持ち帰ってしまった純一が「間違いを消したいのにやり方がわからない」とこぼしたように、彼らはただ間違いを消したかっただけではないだろうか。踏みとどまりたかったのに、踏みとどまる方法がわからなくなってしまっただけではないだろうか。それは、個人に背負わせるのではなく、社会全体で考えるべき問題のはずだ。