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警察が「あの男」に辿りつけない理由

一見、普遍的なすべての悲劇を繋ぐ、香川照之が演じる「あの男」という存在は、ある種、自然災害や疫病といった人知を越えた現象を説明するために生まれたとされる「妖怪」のような存在とも言えるのかもしれない。
第6話予告で描かれた「偶然とか災難っていうのは目に見えない引力みたいなものが働いた結果だと思ってるんです。つまり目に見えない力が積み重なって可視化されるに至ったとき、人々は初めてそれを、偶然とか災難という形で認識するんじゃないでしょうか」という彼の言葉は、まさにそんな彼自身を示しているように思える。「空っぽだからさ、俺」と第2話で香川演じる男が言うように、彼は、彼ら彼女らの前にぽっかりと空いた得体の知れない「闇」そのものだ。第4話で俊哉(奥野瑛太)が言ったように刑事たちは「わかりやすい悪意を血眼になって捜している」から犯人になかなか辿りつけないのだろう。なぜなら「わかりやすい悪意」の先に、彼はいないのだから。