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アカデミー賞有力『野生の島のロズ』が提示する「AIに感情はあるか」という問い

2025.2.7

#MOVIE

原作では「ロボットに感情がわくことはない」と言い切っている

原作小説『野生のロボット』を読んでみると、子どもにもわかりやすい表現を用い客観的な視点から、「ロボット(AI)の感情とは」「生きているとは何か」「親とはどのような存在か」などと哲学的な思考を促す箇所が多い。引用すると、以下のようなものだ。

みんなも知っていると思うけど、ロボットに感情がわくことはない。そこは人間とちがう。けれど、きずだらけの箱の中で、折りたたまれたように小さくなってすわっているロズは、ぼくらが好奇心を持ったときみたいになっていた。たとえば、「空のかなたで明るくかがやいて、あたたかい熱を発しているあの球体はなんだろう」ってね。すると、コンピュータ頭脳が動きだして答えを出す。「太陽」と。

母親がロボットっていうのは、たいへんなことだろう。キラリにとって一番たいへんなのは、自分の母親だというのに、疑問がつきまとうことだ。ママはどこから来たんだろう?ロボットでいるってどんな感じがするんだろう?ずっといっしょにいてくれるのかな?こんな疑問で、キラリの頭はいっぱいになる。母親のことは大好きなのに、いつもどこかに不安が残って、ときどき怒りがこみあげてくる。

野生のロボット (世界傑作童話シリーズ) 福音館書店 14ページ、および142ページより

意外にもというべきか、原作では「ロボットに感情がわくことはない」とはっきり言い切っている上に、その思考も機械的なプロセスの元だという冷静な視点がある。ロズを母親だと心から慕っているはずの息子のキラリは彼女がロボットだとわかっているし、成長していくうちに矛盾や疑問も膨らんでくる。

安易に「AIのすべてを受け入れたりしない」「AIを人間とイコールにはしない」バランスは、言葉での説明が少なく「画で語る」今回の映画にも受け継がれており、物語を経てキャラクターそれぞれの考え方が大きく変わっていく様子にも感動がある。

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