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『rockin’on sonic』仕掛け人・山崎洋一郎インタビュー 洋楽不振でもやる理由

2024.12.27

#MUSIC

コロナ禍とサブスク需要で、急速に世代間の音楽が混ざり合った

─世代ごとに洋楽の入り口が違う中で、今回のフェスはそのすべてを包括しているように感じます。僕自身は50代ですが、このラインナップには懐かしさを覚えますし、同時に「今」のアーティストも含まれているのが魅力的。一方、ASIAN KUNG-FU GENERATIONや[Alexandros]の影響で邦楽ロックを好きになり、そこから洋楽に触れた40代前後の人たちはまた違った感慨深さがあるのではと。

山崎:それに加えて、Jimmy Eat WorldやDeath Cab for Cutieのようなバンドもいます。彼らは別の文脈で、例えばストレイテナーやELLEGARDENといった邦楽バンドに影響を与えた流れの一部だと思います。

─(編集)私は今27歳なんですが、Helsinki Lambda ClubをきっかけにWeezerを知ったり、下北沢のライブハウスで出会ったバンドからThe Lemon Twigsを教えてもらって好きになったり、小さなコミュニティやバンドを通じて洋楽に触れる機会が多かったんです。そういう出会いが、私にとっての洋楽の入り口でした。

山崎:それも素敵な入り口ですね。そうした小さなきっかけから洋楽に興味を持つ人たちが、このフェスに来てくれたら嬉しいです。実は今回、このタイミングでフェスを開催することにしたのも、冒頭で言ったように音楽の「聴かれ方」がここ数年で大きく変わりつつあると感じたからなんです。特にZ世代が登場したあたりから、それまで世代ごとに分断されていた音楽の好みが溶け合い始めているように思います。

─それは、具体的にはどういったことでしょうか。

山崎:以前は、上の世代が若いアーティストを見る機会が少なかったですし、逆に若い世代がレジェンドに触れることもあまりありませんでした。でも今は、サブスクのおかげで世代を問わず音楽を手軽に聴けるようになりました。これが大きな変化を生んでいます。

サブスク以前は、アルバムを買ったり借りたりする必要があったので、自分の世代の音楽に留まりがちでした。でも今は、上の世代が若いアーティストに興味を持ち、若い世代がレジェンドに触れる機会が格段に増えています。こうした世代間の壁がなくなり、音楽が混ざり合う現状が急速に進む中で、このフェスを開催する意義を強く感じたんです。

─確かに、インターネットやSNSの普及、特にサブスクの登場で音楽の世界が一気に広がった印象がありますね。

山崎:しかも、コロナ禍がその変化をさらに加速させたと思います。それまでの音楽シーンはライブとセットで成り立っていました。主に自分の世代のアーティストのライブに足を運ぶことが中心でしたが、ライブハウスやコンサート会場に行くのは手間がかかりますし、頻繁に通うのは難しいですよね。

ところがコロナ禍でライブがほとんどできなくなり、音源を聴くしかない状況になりました。YouTubeでMVやライブ映像を見ることが主な選択肢になったことで、それまで触れる機会の少なかった他の世代の音楽にもアクセスが広がり、一気に盛り上がった印象があります。

─しかも、再結成したアーティストに対して最近の若い世代はとても寛容だと感じます。昔はSex PistolsやPixiesの再結成のときなど、「金目当てだ」といった冷たい見方をされることが多かったですよね。そうした批判がほとんど聞かれなくなった気がします。

山崎:確かに。昔はロックバンドといえば、結成して戦いがあって、勝つバンドも負けるバンドもいる。そして最後は解散して終わる。そういう「ロックバンドの物語」が一般的でした。でも、その後に「再結成」という新しい形が生まれ、それ自体が一つの物語として受け入れられるようになった。若い世代にとっては、再結成も「あり」というか、「それもバンドのストーリーの一部」として自然に捉えられているように感じます。

─なるほど。とても興味深いです。

山崎:僕らの世代は、再結成に対してどこか許せない気持ちや抵抗感が昔はありました。今は世代間の断絶のようなものが薄れ、若い世代がレジェンドたちに無条件のリスペクトを持ってくれるのも、大きな変化だと感じますね。

─ロッキング・オンとしてのジャーナリスティックな視点や文脈を提示する役割が、今回のラインナップにも反映されているように感じます。

山崎:そこは非常に強く意識しましたね。ロックというのは、進化を続けながらも、その中で脈々と受け継がれていくものだと思っています。つまり、伝統を大切にしながらも常に新しくなっていく、そうした「縦の流れ」を一つのフェスとして形にしたいという思いがありました。

たとえば雑誌では、The Rolling Stonesのインタビューも、20代のThe Lemon Twigsのインタビューも掲載されることがありますよね。異なる時代や世代のアーティストが並列に語られることで、より多様で面白い視点が生まれる。それと同じ発想で、今回のフェスのラインナップを組み立てています。

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