INDEX
自らが誰かを問い、聴くものにも同じ問いを提示する
「アメリカに生きる田舎出身の黒人女性の立場から、白人優位で作られてきたアメリカに異議を唱え、同時に、音楽はさまざまな文化の遭遇そのものであることを表現し続ける」――一見相容れないアプローチだが、ギデンズの音楽ではこの2つのテーマが見事に両立している。彼女の音楽を通して、私たち日本のリスナーは、音楽こそが異文化とのコンタクトゾーンであることを再確認する。そして、アメリカの歴史と文化から消去されてきた黒人の存在も聴き知る。
一方で、彼女の音楽やその背後にある命題は、私たちが生きている「今」がどのように創られてきたのかについて考え直すきっかけも与えてくれる。それは、アメリカのポピュラー音楽に強く影響されてきた日本のポピュラー音楽文化を、単なるアメリカ文化への憧れであると単純に判断することを拒ませる。私たちが作ってきた「洋楽」のような「邦楽」、それは文化の混淆ではあるのだが、誰のどのような歴史観とリアルのために、いま認識する形となっているのか。そんな問いをも提示してくれるのだ。
ギデンズが自分自身が誰かを問うように、彼女の音楽は、聴くものにも同じ問題を提示する。彼女の音楽を愛でる私たちとはいったい誰で、どのような歩みを経てきたのか。その歴史を知って、どのような音楽を展望するのか。このような壮大な問いに応えようとする人間的な営みのサウンドトラックを、ギデンズは奏で続けている。

『RHIANNON GIDDENS & FRANCESCO TURRISI with special guest KAORU WATANABE』

2025年3月1日(土)〜3月3日(月)
会場:BLUE NOTE TOKYO
料金:ミュージックチャージ9,000円
メンバー:Rhiannon Giddens(vo, banjo, vln)、Francesco Turrisi(p, acc, tamb, frame drum)、Jason Sypher(b)
Special Guest:Kaoru Watanabe(per,fl)
https://www.bluenote.co.jp/jp/artists/rhiannon-giddens/