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リアノン・ギデンズとは誰か ビヨンセ受賞作で注目のバンジョー奏者の足跡を振り返る

2025.2.25

#MUSIC

アメリカーナの旗手、クラシック音楽をも拡張

その後ギデンズは、カントリー、ブルース、ソウル、R&B、フォークなどのアメリカのルーツ音楽を現代に継承するジャンル「アメリカーナ」の代表的アーティストとしての地位を固めていく。2014年には、T・ボーン・バーネット(T Bone Burnett)のプロデュースによる、ボブ・ディランの未発表の歌詞から音楽を制作するプロジェクト「The New Basement Tapes」に、エルヴィス・コステロらと共に参加。2015年には、バーネットのプロデュースでソロデビューを果たしている。

黒人女性のバンジョー奏者4人によるコラボレーションアルバム『Songs of Our Native Daughters』(2019年)も注目を浴びた。アリソン・ラッセル(Allison Russell)、アミシスト・キア(Amythist Kiah)、レイラ・マッカラ(Leyla McCalla)と共に、17世紀から19世紀に残されたアフリカ系アメリカ人女性の苦悩と抵抗、そして希望の物語を、黒人女性によるバンジョーの演奏によって表現した作品だ。

イタリア・シシリア島出身のマルチインストゥルメンタリストのフランシスコ・トゥリッシ(Francesco Turrisi)とのアルバム『They’re Calling Me Home』(2022年)では、再びグラミー賞最優秀フォークアルバム賞を受賞している。なお、来る2025年3月、ギデンズはフランシスコ・トゥリッシとともに来日公演を行うことが発表されている。

2020年以降は、アメリカのルーツ音楽を軸足にクラシック音楽の定義を拓こうとする活動が著しい(※)。オーバリン大学音楽学校でオペラを学んだギデンズは、クラシックにも造詣が深い。2022年には、作曲家のマイケル・エイブル(Michael Abe)と共にオリジナルのオペラ『Omar』を製作し、2023年ピューリッツァー賞音楽部門の最優秀作品賞を受賞した。2020年からは、チェリストのヨーヨー・マが設立した「シルクロード」という団体の芸術監督を務めている。同団体のアンサンブルによるアルバム『American Railroad』(2024年)では、鉄道工事に関わった多くの労働者たちのストーリーを、さまざまな国籍や音楽ルーツを持つミュージシャンによって奏で、アメリカのルーツが多文化であることを主張した。3月の来日公演のゲスト、渡辺薫は、このシルクロードと関わるメンバーで、ニューヨークを拠点とする日系アメリカ人の現代音楽の作曲家だ。

※アメリカーナ勢のクラシック界での活躍については、日本でもいち早くギデンズを紹介してきた音楽評論家の能地祐子による著書『アメクラ! アメリカン・クラシックのススメ』(DU BOOKS、2017年)に詳しい。

アメリカのルーツ音楽に根差したギデンズの多岐に渡る活動は、学術界からも認められた。2020年には彼女の出身地にあるノースキャロライナ州立大学グリーンズボロー校から名誉文学博士号を、続く2023年には名門プリンストン大学から名誉音楽博士号を授与されている。

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