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「クラブ」という環境、文化が両者に与えた影響

─ではダンスミュージックという見方では、自分たちの音楽をどのようにとらえていますか?
西山:パソコン音楽クラブはダンスミュージックに年々、シフトしてきたなって思いますね。当初はそこまで意識してなかったんですけど、やっぱり出演する会場はクラブが多いし、そうなるとDJカルチャーが隣にあるじゃないですか。身体性ありきの音楽の場でやることの影響はありましたね。だから今回の『Love Flutter』はもう、ダンスミュージックを作ろうと思って制作しました。
─クラブでのパフォーマンスの経験が、曲作りにもフィードバックしてきた、という感じでしょうか。
柴田:活動の年数とともに、(会場の)スピーカーのサイズも大きくなっていって、ドラムとベースの重要性をますます意識するようになりましたね。
柴田:ダンスミュージックを作るにあたっての大まかなルールや共通のセオリーってあると思うんですけど、一方で人それぞれ固有のリズム感もあると思うんですよ。
「これじゃ踊られへんやろ!」って僕が思う曲が人によっては、「いや俺は踊れますが」となるみたいな、リズムに対する感覚には個人差があると思うんですけど、そこも尊重したいところではありますね。
西山:最近、二人で作っててぶつかるのが「このビートは身体が動くよね」って柴田くんが言うタイミングがまったくわからないってことで(笑)。それは柴田くんが言う個人差だったり、美意識の違いなのかなと思います。
─LAUSBUBのお二人もまた、DJ活動が増えたり、クラブカルチャーにより接近している印象ですが、今作にその影響はありますか?
岩井:クラブやDJの経験はアルバムに反映されていると思います。特にclub asiaの周年イベント『F F F』に出演させていただいて、パソコン音楽クラブやimaiさんのライブを観て「この音がこの音響で鳴ることで、こういう効果が生まれるんだな」と勉強になって。制作においても特定の環境、クラブの音響で鳴らしたときの質感を意識するようになりましたね。
─地元・札幌のクラブでも、DJをされていますよね。
岩井:札幌ではいろんなジャンルの音楽がひとつのイベントに集うことが多いですね。それと、Precious HallやPROVOとか、札幌の音楽の要塞みたいな場所に育てられたことは自分たちの表現にも表れていると思います。
高橋:私も『ROMP』の制作中は札幌のクラブによく行っていたんですけど、札幌はシーンがギュッと詰まってて、異なる音楽のコミュニティーにいる人が混じり合ってるんです。そういう場所にいたことが制作にも反映されているように思います。
─地方はそもそも音楽をやっている人の母数が少ないから、いろんなジャンルの人が寄り集まるというのは、自分も最近まで四国にいたんでよくわかります。パソコン音楽クラブも、地元である関西でそういう感覚はあったんじゃないでしょうか。
西山:そうですね。まあ大阪はまだ比較的大都市なんで、もうちょっとジャンルの幅があったとは思うんですけど、自分たちみたいな音楽をやってる人が当時はまだ全国的にも少なかったと思いますし、パソコンを使ってライブする人も今ほどいなかった。そういうこともあって必然的にライブをやれる場所は限られてて、いろんなジャンルがごちゃごちゃしたところに放り込まれる感じはありました。バンドの人たちと一緒にやったり。
でもそれが結果として自分たちの音楽の糧になったというか。昔の大阪は、インディーロックとネットレーベルとエクスペリメンタルとか、あと、ローファイハウスやごく初期のシティポップブームとかがごちゃ混ぜになった感じが刺激的でしたね。zicoさんっていうオーガナイザーの方がいろいろ企画されていたんですけど(※)。
※編注:『POW』や『OZ』といったパーティーの主催者。2017年12月29日、南堀江SOCORE FACTORYで開催された『POW』と『TØNO』の合同イベントでは、パソコン音楽クラブのほかにYousuke Yukimatsu、食品まつり a.k.a foodman、Le Makeupらが出演した(外部サイトを開く)