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心は「テクノ」、でもポップスであることも手放さない
─2組は自分たちの音楽を説明するときはどう表現していますか?
西山:以前、「パ音はジャンルから逃げてますよね」って言われたことがあって、それはたしかにと自分でも思ったんです。でも振り返ってみると、自分たちの音楽に通底してあるのは「テクノ」ですね。まあ「テクノ」も広義と狭義の意味がありますけど、ひと言で言えって言われたら、「テクノミュージックをやってます」って言ってもいいのかなって思えるようになってきました。
そもそも『Love Flutter』は今後の方向性を示す作品にしたかったんですよ。それで自分たちが好きなもの、目指すべきものは何かっていうと、やっぱり「テクノ」なのかなと。柴田くんはどうかわからないですけど。

2015年結成のDTMユニット。メンバーは⼤阪出⾝の柴⽥碧と⻄⼭真登。ハードウェアシンセサイザーを駆使したサウンドをベースにエレクトロニックミュージックを制作している。2018年に初の全国流通盤となる1stアルバム『DREAM WALK』をリリース。 2019年、2ndアルバム『Night Flow』は「第12回CDショップ⼤賞2020」に⼊賞し注⽬を集める。2021年10⽉に3rdアルバム『See-Voice』、2023年5月に4thアルバム『FINE LINE』をリリース。そして2024年8月7日に5thアルバム『Love Flutter』をリリースする。
柴田:まあ、僕も概ね同じところではあるんですけど、(パ音は)ポップスの要素もあるのかなと思いますね。だから、人に自分たちの音楽を聞かれたら、「シンセの音で作られた、ダンスミュージックの要素もあるポピュラー音楽です」って言うかもしれないです。
西山:柴田くんはあくまでパ音はポップスだと思ってるってことやね。
柴田:何をポップスとするかは難しいですけど……でも、やっぱりどっかでみんなに聴いてほしいという意識があって、自分の音楽を(人に伝わるように)翻訳して作曲しているような部分はあると思います。
─それらもひっくるめて、あえてひと言で言い切るなら「テクノ」という感じなんですね。LAUSBUBはいかがでしょうか?
岩井:今のパソコン音楽クラブのお二人の話は、共感する部分しかなかったです。そういう「テクノ」って言葉の指す範囲の広さを、改めて最近感じます。やっぱり自分のやりたい音楽をポップスに、歌ものとして聴けるようにすること、柴田さんがおっしゃった「翻訳」みたいなことをLAUSBUBもしてるのかなと思いました。そのバランス感は今後も保ちたいですね。
─LAUSBUBは「ニューウェイブ・テクノポップバンド」として紹介されることが多いですよね。
岩井:そう名乗ってはじめたんですけど、だんだんニューウェイブでもなくなってきてると薄々感じはじめていて(笑)。エクスペリメンタルって断言できる感じでもないし、でも俯瞰して聴けば、LAUSBUBもポップスとして聴けるかな、って感じもあるなと。

2020年3月、北海道札幌市の同じ高校の軽音楽部に所属していた岩井莉子と髙橋芽以によって結成されたニューウェーブテクノポップバンド。2021年1月18日、Twitter投稿を機に爆発的に話題を集め、SoundCloudで全世界ウィークリーチャート1位を記録。AIR-G’ FM北海道でオリジナルプログラム『Far East Disco』の担当、『札幌国際芸術祭2024』テーマソングを担当するなど活動の幅を広げる。2024年7月、1stアルバム『ROMP』をリリースした。
高橋:私もLAUSBUBがニューウェイブか、ポップスかと言われると、わからないって感覚はありますね。
柴田:Bandcampとか漁ってるとこれサイン波テキトーに録っただけやろ、でもめっちゃいいなあ、みたいな曲とかあるじゃないですか。そういう「実験経過」みたいな音楽も好きですけど、そこで終わらずに、いろんな人が聴けるように翻訳する作業に挑んでる人にも僕はグッとときます。