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現代的な訴訟を扱いつつ、亮子と父・粒来との複雑な関係を描く第5~8話

第1話から、各話に印象的な登場の仕方をし続けていた、亮子の父親で12年間失踪中だった弁護士・粒来春明(古田新太)が本格的に登場した第5話からは、扱われる訴訟の方向性も変わっていった。
第5話~第6話は2話あわせて、アメリカの有名な資産家の娘・サトウエマ(秋元才加)による、亡き父・マサル(石橋凌)が受けた高額医療ツアーがインチキだったのではないかとの訴訟を扱った。元々は地域に根ざした総合病院だったが、父から息子へ院長が変わったことによって、富裕層向けの病院に改革したというのも、どこかで聞いたことがある話。医療ツアーの流行や、高額医療に関する訴訟も現代的な事象ではある。そして、この回で病院側の弁護士を務めたのが、粒来であった。父親との法廷での争いをゲームのように楽しむ亮子であったが、粒来が用意してきたマサルが自身の思いを語る動画を見たエマは、そこに映るマサルこそが自分が知る父であったと認識を改め、訴訟を破棄。本作の第1話で弁護士となった亮子は、初めての負けを父との戦いにおいて経験し、弁護士事務所に戻った彼女は、人目もはばからずに号泣する。

第7話は、人気ドラマのロケ地となった町の住民が、聖地巡礼に訪れるドラマファンによるオーバーツーリズムやゴミの散乱などマナー違反に耐えかねて亮子に相談したことから始まる。更に、現地で行われたドラマのプロデューサー・坂口武広(林泰文)によるトークショーの現場で事故にあった地元の饅頭屋「みやこし」従業員の前園里佳子(堀未央奈)が、トークショーに携わった地元の役所観光課とテレビ局の事業部、過重労働を強いた「みやこし」の店主を相手取っての訴訟を起こしたことから話は展開。聖地巡礼が一般化したのも2010年代以降。「推し活」が話題となった2024年に扱うのに相応しい今どきのモチーフであると言える。
第8話で描かれたのは、成績優秀な高校生・栗本颯(坂元愛登)と仲間が犯した「闇バイトごっこ」の訴訟に対する弁護。他人の家に侵入するだけで、窃盗など直接的に迷惑はかけない、本人たちにとっては「子どもの遊び」のつもりの行為だったが、住居不法侵入は立派な犯罪。栗本がバイトするスーパーの同僚・橘清美(石野真子)宅に侵入した帰りに警察に出くわし、逮捕となった。「闇バイト」自体は、この数年、話題となっている社会問題ではあるが、今期もドラマ『3000万』(NHK)や『潜入兄弟』(日本テレビ系)で描かれるなど、2024年に特に注目を浴びたトピックとなった。
第5~6話で扱われた訴訟に続いて、第8話の訴訟においても、粒来(古田新太)が関わっていた。「闇バイトごっこ」事件を担当した検察の藤吉伸(近江谷太朗)は、この「闇バイトごっこ」事件も利用して闇バイトの指示役である通称「キング」の逮捕にこぎつけようと画策していたのだが、そのキング逮捕を願っていたのは粒来も同じだった。第6話で粒来が行った裁判員への心理誘導を真似て、泣き真似で裁判員の心情を揺らがせることによって勝利した亮子。直接的ではない、父から娘へのバトンタッチが描かれた。