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創造のプロセスを垣間見る


習作では、どんなふうに水面に睡蓮が浮いていたのか、木の姿が映り込んでいたのかが少ない色でサッと描き留められている。一方、隣の『睡蓮』では、構図は完全にそのままに水面が赤やオレンジに染まり、モネの心を捉えていたのは燃えるような夕映の景色だったのだと分かる。まるで塗り絵のビフォーアフターである。こんな風景を見て「描こう」と思った画家が、習作では全く夕暮れを思わせる色彩を使っていないことに驚いた。画家の眼と脳に焼きついた色彩は、構図が定まった後に確信を持って一気にアウトプットされているのだろう。ちなみにこれと同じ構図のバリエーションはおよそ15点あるらしい。