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映像×舞台ドラマ『滅相もない』で加藤拓也が描く「穴に入りたい」過去との向き合い方

2024.6.14

#MOVIE

©「滅相も無い」製作委員会・MBS
©「滅相も無い」製作委員会・MBS

「穴」は救いか逃げ道か。「穴」をめぐる8人の人生が描くもの

さらに、同じ俳優が回想シーンも現在のシーンも演じていることさえ、「過去のどんな出来事も地続きで今日まで繋がっている」というメッセージを含んでいるように感じられる。従来的な方法で、若い別の俳優によって演じられる登場人物の過去は、ともすれば断絶されたとある点のように見受けられる。しかし、現実はどんな過去も今日に至る過程で、自分という人間の構成要素にほかならない。後めたい出来事でさえ、今日の自分の血肉になっていると捉えられれば、成仏できる思いもあるだろう。

取り返しのつかない失敗に、立ち行かなくなった人間関係。平穏に暮らしたいだけの日々にノイズは多く、日常を肯定することは簡単なことではない。だからこそ、辛い現実に蓋をして「その場しのぎ」的な癒しを求めて、束の間の非日常的な空間に逃げてしまいたくなるし、『滅相もない』に登場する彼らは「穴」に入ることを選んだのだろう。

©「滅相も無い」製作委員会・MBS

穴の出現によって、日常空間に生まれた非日常なSF的状況。しかし、そこにいるのは我々と相違ない複雑な感情を抱えて毎日を生きる8人の人物。穴に救いを求めた人々は自分語りを通して、自身の人生と向き合う。8通りの人生が描くのは、人生の多様さ。清算したい過去を抱えているのは決して自分だけではない。現実から逃避せずに向き合うことで、世界は自分の手が届く範囲よりも、もっとはるかに広いことを実感する。

©「滅相も無い」製作委員会・MBS

最終話、全員の人生の記録係で8人を取りまとめる窪田正孝演じる岡本は、穴を目の前にして、近くにあるお気に入りのカフェの看板猫とホットコーヒーを思い出し、雪が降っていることに気づく。「穴に入るか?」と岡本に聞かれた小澤は、答えぬままじっと岡本を見つめている。穴の向こうは天国か、それとも地獄か。物語を通して、穴の中の世界は一度も描かれていなければ、穴の中に足を踏み入れる描写もない。小澤が提示した救いは、もしかしたら「穴の中」ではなく、自分の中にあるのかもしれない。

©「滅相も無い」製作委員会・MBS

ドラマイズム「滅相も無い」

出演:中川大志 染谷将太 上白石萌歌 森田想 古舘寛治 平原テツ 中嶋朋子 窪田正孝 / 堤真一
監督・脚本:加藤拓也
企画・プロデュース:上浦侑奈(MBS)
プロデューサー:戸倉亮爾(AX-ON) 林田むつみ(MEW)
制作プロダクション:AX-ON
協力プロダクション:ウインズモーメント
製作:「滅相も無い」製作委員会・MBS
公式 HP
https://www.mbs.jp/messoumonai/
公式 SNS
公式 X(旧 Twitter):@dramaism_mbs https://twitter.com/dramaism_mbs
公式 Instagram:@dramaism_mbs https://www.instagram.com/dramaism_mbs/
公式 TikTok:@drama_mbs https://www.tiktok.com/@drama_mbs

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