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坂本龍一から学んだ、ジャンルを超えても揺るがないアーティスト像
ーいろいろなプレッシャーや葛藤があった中で、変化があったのはクラシックと箏を融合させた3枚目のアルバム『In A Landsrcape』(2021年)あたりだったのかなと思います。
LEO:ありがたいことに早い時期にデビューすることができて、2枚目のアルバムぐらいまでは箏の王道のレパートリーをやってたんですけど、あまり未来を感じなかったんです。箏をもっと広めたり、食べていけるようになるには、箏のジャンルにとどまっているだけじゃダメだと思って、そこからクラシック音楽とのコラボを始めました。クラシック音楽ファンの方にもコンサートに来ていただけるような動線作りをして、その成果をまとめたのが『In A Landscape』です。
ーなるほど。
LEO:そこからいろんなことに挑戦したんですけど、どこか満たされない感じがずっとあって。その時に、クラシックをやっていてもジャズをやっていても、いつも自分の音楽の主軸にあるのは箏だったと気づいたんです。昔から受けていたプレッシャーもあって、「箏をどんなジャンルにあてがえば面白くなるだろう?」「どうすれば箏の魅力が伝わるだろう?」という考えになってしまっていたので、まず箏があって、僕というメディアを通して箏を使った音楽にしていた。でも最新作の『microcosm』を作るときはそれを逆転させて、一番表現したいのは僕自身で、その手段として箏があるっていう考え方に置き換えたら、やりたいことが一気にあふれ出てきたんです。今までのアルバムは完成したら「よし、終わった!」という感覚だったのが、今回は完成後もまだやりたいことが尽きない。なので、ある意味これが本当のファーストアルバムのような気がしています。

ー先ほど坂本龍一さんの名前が挙がっていましたが、LEOさんの師匠である沢井一恵さんは坂本さんやジョン・ケージともコラボをしていますよね。LEOさんは『In A Landscape』でも、その次のアルバム『GRID//OFF』(2023年)でも坂本さんの楽曲をカバーしています。LEOさんにとって坂本さんはどんな存在だと言えますか?
LEO:最初は『BTTB』で坂本さんがピアノを弾いてる曲が自然と耳に入ってきて、いいなと思って聴いてた気がします。でも大学で現代音楽を勉強する中で『async』や『out of noise』のような作品も聴いて、精神性の部分に惹かれました。音の質感を大事にする感覚が箏とも共通するし、そういう意味で興味深く聴いていて。それがジョン・ケージともつながり、自分の師匠ともつながって、不思議な感じで広がっていきました。
そこから坂本さんが今までにいろんな音楽の道筋を作ってきたことをだんだん知っていったんです。どんなジャンルの音楽でも、どんな表現をしていても、ずっと坂本龍一という芯がある。僕はそういうアーティスト像にすごく惹かれていて。今回参加してもらってるフランチェスコ・トリスターノもそうですし、僕がすごく好きなティグラン・ハマシアンもそうなんですけど、みんなちゃんと芯があって、独自の音楽を作っている。そういうアーティストになりたいなというのは昔からずっと思っていたことではありますね。