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Laura day romanceが語る、曖昧なものの美しさ。バンドも人間も、非合理的で魅力的

2025.2.13

#MUSIC

「どんどん合理的になっていくものに抗いたい」(鈴木)

―現実に対して「綺麗なものだけじゃない」という諦めのような認識があったうえで、音楽を作って演奏するという行為は、きっと鈴木さんの中で「2周目のポジティビティ」を担う行為であり続けているわけですよね。鈴木さんが音楽を生み出すことに対して求めているものや、そこで与えようとしているものって、どういうものなのだと思いますか?

鈴木:基本的に、僕が作りたいと思うものや憧れるものって、その作品を通して「思っていたけど表現できなかった感情」みたいなものが、様々なバランス感覚を駆使して、妥協なく表現されている作品なんです。そういうものを作ることができて初めて、その感情に名前を付けることができるような気がしていて。曲を書いていると、「自分って、こういうことを思っていたんだ」と思う瞬間があるんですよね。そうやって自分が表現したものに対して聴いた人からのリアクションがあると、自分の感情を分かち合えたような気持ちになる。深いところで繋がっているような感じがするんです。自分が求めているのはそういうことなのかなって思います。

―同じ質問をおふたりにもしたいんですけど、井上さんはどう思いますか?

井上:友達の惠愛由(BROTHER SUN SISTER MOON)とやっているポッドキャストでもよく話すんですけど、私たちの世代はセーフティネットというか、「何かあったときに誰かが絶対に助けてくれる」という安心感が少ない感じがするんですよね。そう思った時に、分かり合える人同士で手を繋いでいる感覚があれば、本当の孤独感は避けることができるんじゃないかと思っていて。そういう生きる上で大事なものに気づいたり、考え出すきっかけに自分の存在がなれればいいな、とは思います。私が音楽をやる意味ってそこにあるのかな、とは少し思ったりしますね。

―なるほど。

井上:あとは普通に「素晴らしい作品を作りたい」という思いもあるし、「自分が聴きたい歌を歌いたい」という気持ちもずっとあります。「この人の声はしっくりくるけど、この人の声は、いい曲なのに聴けない」みたいなことが私は割とあって。でも(鈴木は)それを乗り越えられる曲を作れる人だと思っているから。あとは日本の音楽の底上げをしたい。デカいことを言っていますけど(笑)。

鈴木:いや、それは思ってるよ。

井上:単純なメッセージを広めるよりは、複雑なものを広める方が、みんながより豊かになるんじゃないかとはずっと思っていて。私が中学生くらいの頃に流行っていたバンドって、めっちゃカッコよかったんですよ。バンプ(BUMP OF CHIKEN)とか。あの頃のバンドの「かっこいい!」って感じを取り戻したい。野望は尽きない(笑)。

―かっこいいと感じたのは、まず何よりバンドだったんですね。

井上:バンドでしたね。かっこいい音楽はバンドだったよね?

鈴木:バンドだったね。時代の方向性として、今、バンドほどコスパの悪い存在ってないと思うんですけど(笑)。金もかかるし、個性がある人間が集まるとぶつかったりもするし。でも、「コストがかかるから、いらない」みたいな、どんどん合理的になっていくものに抗いたいという気持ちは作品にも込めているし、自分たちの存在を通して伝えたいことでもあると思いますね。

―音楽に何を求め、何をやろうとしているのか。礒本さんはどうですか?

礒本:僕たちがやっている音楽って、新しい発見をしてもらうというより、聴いた人たちの中に元々あった、名前の付いていないものに気づいてもらう……そういうことだと思うんですよね。他の誰かの中に美しさを見つけることも、自分の中に醜さを見つけることも、それは新しいものを見つけているわけじゃなくて、元々自分の中にあったけど、気づいていなかったものに気づくことだと思う。そういうものを感じ取ってほしいな、とは思います。

礒本:そのうえで、気づいたものにありふれた言葉を当てはめてほしいわけでもなくて。「曖昧なまま、そのまま生きていてもらって構わないですよ」って。今は何事も「明確にしよう」という世の中になってきている気がするけど、でも、もっと微妙なものの中に美しさはあると思う。なので、「自分たちの音楽を聴いて、こうなってください」みたいな明確なものはないですけど、ただ、複雑さに対して深く考えること自体が、この先の人生に対していいものをもたらすんじゃないかっていうことは、思ってます。

鈴木:確かにね。今回みたいな、こういう作品があることも、誰かの救いになるかもしれない。一生懸命やっていたら勝手に辿り着いていたことだけど、今振り返ってみれば、ローラズがこの状態で存在できるだけで、だいぶ意味があるんだっていう。

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