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レディー・ガガ5年ぶり新作『MAYHEM』レビュー。ごった煮が魅力のダンスポップ

2025.3.12

#MUSIC

キッチュ / キャンプな感覚を残すディスコサウンド

アルバム中盤、“Zombieboy”から“Shadow Of A Man”あたりまでは、ディスコやファンキーなAORテイストの楽曲が続く。芯が太くダイナミックなガガの歌唱が、ディスコの快楽主義的なグルーヴによく映えている。また、ディスコをやるにしても、現代的な洗練やサウンドのアップデートを施すのではなくて、ディスコが持つキッチュさやキャンプな感覚を、保身的なアイロニーに陥らず堂々とやってのけるあたりにガガのアーティストとしての強さが現れているように思う。

“Zombieboy”はキャンプなディスコチューンだが、Duft Punkの『Discovery』を彷彿とさせるところがある。特に、硬質なベースラインに加えて、速弾きのようなディストーションギターのフレーズは、“Aerodynamic”のような楽曲を連想させられる。“Shadow Of A Man”にも、ディスコサウンドにロックなギターががっつり取り入れられている。こうしたギターに特に強く感じるのだが、ダンスミュージック、特にディスコがもつ「いなたさ」や「いかがわしさ」を脱色しないあたりにガガが愛される所以があるはずだ。そうしたサウンドをゴージャスに繰り広げつつ、“Shadow Of A Man”は男性中心の音楽業界でソロアーティストとして活動してきたかつての自分の姿を力強く振り返る内容になっているのも見過ごせない。

ラストを飾るのはバラード3連発。ポランスキーをクリエイティヴなパートナーとして、サウンドもアーティストとしてのアティチュードも問い直した本作の成り立ちを考えれば、“Blade of Grass”は本作のストーリーを完結させるのにうってつけの、重要な曲だ。なにしろ、草の葉を指輪にして永遠の愛を誓うロマンティックなストーリーは、ガガとポランスキーの実際のやり取りをモチーフにしているというのだから。そう考えると、ブルーノ・マーズとの“Die with A Smile”はどうしても蛇足に思える。ラグジュアリーでドリーミーなサウンドも、メロディアスでドラマチックなソングライティングも、ハリウッド的、ラスベガス的にすぎるところがあり、原点回帰を目指す本作からはいささか浮いている。

『MAYHEM』は、初期のガガを思わせるケレン味を取り戻しつつ、キャリアを重ねたうえでこそ可能な、アーティストとして活用してきたペルソナと自分自身とを結びつけ直す、円熟の作品でもある。アグレッシヴなダンスポップやキャンプな側面を強めたディスコサウンドもさることながら、要所要所で顔を出す、すっかりありきたりになった1980年代風一辺倒ではない(むしろポストパンクやEBM、インダストリアルを思わせるような)アナログシンセのウォームな攻撃性がアクセントになっているところに、ガガの新たな表現の幅も感じられる。そんなアルバムを象徴する曲としては、やはり“Killah”を推したい。繰り返し聴く一曲になりそうだ。

レディー・ガガ『MAYHEM』(CD)

2025年3月7日(金)発売
価格:3,300円(税込)
UICS-1413
1. Disease
2. Abracadabra
3. Garden Of Eden
4. Perfect Celebrity
5. Can’t Stop The High *
6. Vanish Into You
7. Killah (feat. Gesaffelstein)
8. Zombieboy
9. LoveDrug
10. How Bad Do U Want Me
11. Don’t Call Tonight
12. Shadow Of A Man
13. The Beast
14. Blade Of Grass
15. Die With A Smile (with Bruno Mars)
*日本盤&一部海外限定盤ボーナス・トラック

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