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レディー・ガガ5年ぶり新作『MAYHEM』レビュー。ごった煮が魅力のダンスポップ

2025.3.12

#MUSIC

「ごった煮」を後押ししたプロデューサー=パートナーの助言

一方、ガガがさまざまなインタビューで語るところによれば、彼女が本作のインスピレーションとしたのはちょっと意外なものだ。デヴィッド・ボウイ、プリンス、Earth, Wind & Fireといった名前に加え、Radiohead、The Cure、Nine Inch Nailsも挙げている。どれもビッグネームでベタといえばベタだけれど、それらが一同に介するところは少し想像しづらい。ほかにもグランジやフレンチエレクトロ、インダストリアルといったジャンルにも言及している。

そもそも、「ポップ」というのは、ジャンルのオーセンティシティを追求するよりも、むしろさまざまなジャンルのごった煮であることこそが魅力である。という意味では、多彩なリファレンスと同じくらいジャンルの振れ幅がある『MAYHEM』のサウンドはただしく「ポップ」ではある。しかし、昨今のポップミュージックのビッグネームは、むしろ特定のサウンドとむすびついた綿密なコンセプトを練り上げる傾向にある(その最大の成功例がビヨンセのコンセプチュアルな三部作を成す『RENAISSANCE』や『COWBOY CARTER』だろう)。

そうした現状と比較すると、『MAYHEM』は明晰なコンセプトをサウンドを通じて届けるような作品ではない。むしろ、『ELLE』でのインタビュー(※4)で語っているように、これまで同様アルバムごとにキャラクターを演じあげるのではなく、アーティストとしての自分自身の姿を提示するような作品にしたという。

そのきっかけとなったのは、本作の協働プロデューサーに名を連ねる、ガガのフィアンセでもあるマイケル・ポランスキーの一言だ。『ニューヨークタイムズ』でのインタビュー(※5)で語るところによれば、収録曲の“Perfect Celebrity”を書いた段階では、ロック色の強いグランジアルバムにするプランもあったそうだ。しかし、アルバムのテイストをひとつに絞るよりも、これまでにつくってきた多彩な楽曲を提示したほうがいい――「なにかひとつのものになろうとしなくてもいい」とポランスキーから助言を受けた。それが、バラエティに富んだ、まさに混乱(mayhem)としての本作につながっていったという。

ガガ(左)とパートナーのマイケル・ポランスキー(右)。(”Lady Gaga and Michael Polansky-65154 (cropped)” by Harald Krichel is licensed under CC BY-SA 4.0.)

※4 Lady Gaga Tells Us Everything You Want To Know About ‘Abracadabra’ After That Spectacular Grammys Reveal https://www.elle.com/uk/life-and-culture/culture/a63631038/lady-gaga-abracadabra/

※5 The Interview Lady Gaga’s Latest Experiment? Happiness. https://www.nytimes.com/2025/03/08/magazine/lady-gaga-interview.html

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