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出演者と視聴者が一体となったSNS時代ならではの熱狂

主人公の心麦を演じる広瀬すずは、2025年1月に配信されたNetflixドラマ『阿修羅のごとく』でも宮沢りえや尾野真千子、蒼井優と肩を並べる素晴らしい芝居で圧倒した。広瀬が演じたプロボクサーの夫が大成功を収めたことで一躍華々しい生活を送った咲子と、本作の心麦は真逆のキャラクターだが、強い意志を宿した心麦の瞳はどこか咲子に似ている。そんな心麦の相方であり、ときに保護者のようなまなざしを向ける松風は、松山ケンイチの前作『虎に翼』(NHK総合)が終わった後“桂場ロス”でぽっかり空いた心の隙間を埋めてくれるようなキャラクターだ。松風と共に毎回、プリンが登場するのも、たびたび団子を食べていた桂場を彷彿とさせる。
本編から離れて注目すべきもう一つのポイントは、心麦の父・春生(リリー・フランキー)を殺した犯人が誰なのか、出演者たちにも明かされていない点だ。出演者には、それぞれが登場するシーンのみの台本が配られ、まるで“人狼ゲーム”状態で撮影に取り組んでいる。このように犯人を伝えない状態で撮影が行われていたドラマは、『真犯人フラグ』(日本テレビ系)や『マイファミリー』(TBS系)、『約束 〜16年目の真実〜』(日本テレビ系)などが挙げられるが、今作のように、メインキャストが自身のSNSのアカウントで、積極的に考察を盛り上げているドラマはなかなか珍しい、特に『虎に翼』の全話感想投稿や異例の「フォロー解除祈願」で注目を集めた松山ケンイチは、出演者に聞き込みをした独自の情報を投稿したり、Xのアンケート機能を用いて「怪しい人選抜選挙」を開催したりと、考察する人々の中心にまでなっている。『クジャクのダンス、誰が見た?』は出演者と視聴者が一体となり、まさにSNS時代ならではの熱狂を生んでいるのだ。