『第75回NHK紅白歌合戦』が12月31日(火)19時20分から放送される。出演アーティストは総勢46組。その中で、今年大きな活躍を見せたあのアーティストや、フレッシュな初登場組まで、特に注目のアーティスト5組を紹介する。
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今年一年のポップカルチャーを振り返る『紅白』
『第75回NHK紅白歌合戦』が、今年も大みそかに放送される。今年のテーマは「あなたへの歌」。昨今では視聴率の低迷が取り沙汰されることも多いが、それでも「紅白」は今なお歴史ある国民的番組としての存在感を持ち続けている。
その理由は、番組が持つ「一年の締めくくり」としての位置づけにあるだろう。もちろん基本的には『紅白』は歌番組である。ただ、それだけではなく、特に近年ではヒット曲を通して一年のエンタメやポップカルチャーを振り返るような構成と演出がなされている。今年どんなものが流行ったのか。どんな出来事があったのか。どんな歌手が脚光を浴びたのか。幅広い世代にそれを知らせるような内容になっている。それゆえに、すでに音楽シーンでは熱い支持を集めていたアーティストの楽曲が『紅白』を起点にさらなるロングヒットにつながる例も少なくない。たとえば2022年に披露されたVaundyの”怪獣の花唄”はその代表だ。
NHKは、『紅白歌合戦』の選考にあたって「今年の活躍」「世論の支持」「番組の企画・演出」という3つの要素を中心に総合的に判断したと発表している。
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Creepy Nuts大躍進の1年
「今年の活躍」という点で言えば、まず名を挙げるべきはCreepy Nutsだろう。デビュー7年目にして初出場となる彼ら。”Bling-Bang-Bang-Born”は各種年間チャートを席巻し、2024年最大のヒットソングとなった。子供から中高年まで幅広く楽曲が浸透したというのもポイントだ。
昨今の音楽シーンにおいては、世代を超えたヒット曲は決して多くはない。ストリーミングサービスが普及しBillboard JAPANのヒットチャートが浸透したことで「何がヒットしているか」は10年前に比べてはっきりと可視化されるようになった。ただその一方で、TikTokのバズをきっかけに生まれるヒットソングの数々は、年長世代にとってはその流行が捉えづらいものになりつつある。そういった状況の中でもCreepy Nutsの”Bling-Bang-Bang-Born”は、2023年のYOASOBI”アイドル”に並んで「誰もが認めるその年を代表する一曲」としての認知度を獲得している。R-指定とDJ松永のパフォーマンスも堂々たるものになるだろう。
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米津玄師、B’zら連続テレビ小説主題歌組にも注目
注目すべきは特別企画としての出場が発表された米津玄師だ。6年ぶりの出場となる米津は、2024年前期連続テレビ小説『虎に翼』の主題歌”さよーならまたいつか!”を歌う。日本初の女性弁護士のひとりである三淵嘉子をモデルにしたストーリーの『虎に翼』は放送時から大きな反響を集め、完結後も朝ドラ史に残る名作として高い評価を集めた。その主人公・猪爪寅子を演じた伊藤沙莉は今年の『紅白』で司会をつとめている。これまでも朝ドラのヒロインが主題歌を見守るシーンは恒例となっているが、9月に公開された同曲のフルバージョン映像は伊藤沙莉らが演じる登場人物が踊るロトスコープのアニメーションとなっており、こちらも大きな話題を集めた。『紅白』ならではのスペシャルなコラボレーションにも期待したい。
B’zの『紅白』初出場も大きな話題を集めている。こちらも特別企画で、現在放送中の連続テレビ小説『おむすび』の主題歌”イルミネーション”を披露する。結成から36年、これまで数々のヒットソングを世に放つも『紅白』への出場は一度もなかった彼ら。今回が満を持しての出場となった。『おむすび』主演の橋本環奈も『紅白』で司会をつとめている。こちらもスペシャルな機会になりそうだ。
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tuki.、Number_i……フレッシュな初登場組に期待
初出場組の中ではシンガーソングライターのtuki.に注目したい。現在高校1年生、素顔は非公開ながらTikTokをきっかけに大きく支持を広めた彼女。2023年9月にリリースされたデビュー曲”晩餐歌”は史上最年少でストリーミング累計再生回数4億回を突破するロングヒットを記録した。2025年1月8日(水)には同曲も含めてtuki.が15歳のうちに作った曲を収録した初のフルアルバム『15』がリリースされる。ここまでは楽曲の話題性が先行してきたが、アーティストとしての才能が本格的に開花していくタイミングでの出場となりそうな予感がする。
Number_iの初出場にも期待が高まる。平野紫耀、神宮寺勇太、岸優太の3人によって2024年1月1日に”GOAT”を発表し活動をスタートした彼ら。4月にはアメリカ最大級の野外音楽フェス『Coachella Valley Music and Arts Festival 2024』に出演、夏には『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024』『SUMMER SONIC 2024』といった大型フェスに出演し、その鮮烈なパフォーマンスでコアなファン以外も魅了してきた。『紅白』の舞台は躍進の一年を象徴するようなパフォーマンスになりそうだ。
他にもこっちのけんと、Omoinotake、新浜レオン、ILLIT、ME:Iといったフレッシュな初登場組が並ぶ。その一方で復活組にも注目だ。デビュー50周年のTHE ALFEEは41年ぶり、デビュー30周年のGLAYは25年ぶりの出場。今年6月に活動を再開した西野カナは『紅白』が活動再開後初のテレビパフォーマンスとなる。
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星野源の歌唱曲変更から感じた表現者としての矜持
そして、『紅白』直前になって、星野源が歌唱楽曲を”地獄でなぜ悪い”から”ばらばら”へと変更することが発表された。星野源は公式サイトに発表したステートメントで、この曲が2012年にくも膜下出血で倒れた闘病生活の中で書いたものであること、そして、そうした楽曲を歌うことでいま苦しい時代を生きる人々を勇気づけてほしいという紅白制作チームからのオファーがあったことを明かしている。その上で、この楽曲が主題歌として用いられた映画の監督に性加害疑惑が報じられていること、『紅白歌合戦』の舞台で歌唱することが二次加害につながる可能性を完全に否定できないとして、同曲を歌唱することを取りやめることを発表した。この決定は様々な方向から論議を巻き起こしている。少なくとも言えるのは、星野源本人とそのチームが強く表明しているように、”地獄でなぜ悪い”は星野源の曲であるということだ。彼自身にとっても、ファンにとっても、とても大切な一曲である。そして、こうした状況を受けて”ばらばら”を歌うことを決めたことに、星野源の強い意志と表現者としての矜持も感じた。
人々の興味関心は多様化している。大みそかの過ごし方も様々だ。『紅白』だって、家族でテレビを囲んで観る人だけでなく、一人でスマートフォンのアプリで観る人もいるだろう。そういう時代にテーマである「あなたへの歌」がどう届けられるのか。楽しみにしたい。
『第75回NHK紅白歌合戦』
2024年12月31日(火)19:20~23:45
※BSプレミアム4K、BS8K、ラジオ第1でも放送
※中断ニュースあり
【紅組】
aiko(15)/「相思相愛」
あいみょん(6)/「会いに行くのに」
ILLIT(初)/「Magnetic」
石川さゆり(47)/「能登半島」
イルカ(2)/「なごり雪」
HY(3)/「366日」
坂本冬美(36)/「能登はいらんかいね」
櫻坂46(4)/「自業自得」
椎名林檎(9)ともも/「ほぼ水の泡」
Superfly(8)/「Beautiful」
髙橋真梨子(6)/「for you…」
tuki.(初)/「晩餐歌」
天童よしみ(29)/「あんたの花道」
TWICE(5)/「TT~Feel Special」スーパーメドレー
西野カナ(10)/「EYES ON YOU 紅白スペシャルメドレー」
乃木坂46(10)/「きっかけ」
ME:I(初)/「Click」
MISIA(9)/「紅白スペシャル2024」
水森かおり(22)/「鳥取砂丘~紅白ドミノチャレンジSP~」
緑黄色社会(3)/「僕らはいきものだから」
LE SSERAFIM(3)/「CRAZY -Japanese ver.-」
【白組】
Omoinotake(初)/「幾億光年」
Creepy Nuts(初)/「Bling-Bang-Bang-Born」
GLAY(4)/「誘惑」
郷ひろみ(37)/「2億4千万の瞳 放送100年 GO!GO!SP」
こっちのけんと(初)/「はいよろこんで」
THE ALFEE(2)/「星空のディスタンス」
JO1(3)/「Love seeker」
純烈(7)/「夢みた果実」
Da-iCE(初)/「I wonder」
TOMORROW X TOGETHER(初)/「5時53分の空で見つけた君と僕 [Japanese Ver.]」
Number_i(初)/「GOAT」
新浜レオン(初)/「全てあげよう」
Vaundy(2)/「踊り子」
BE:FIRST(3)/「Masterplan」
福山雅治(17)/「ひとみ~少年」“あなたへの歌” SPメドレー
藤井 風(3)/「満ちてゆく」
星野 源(10)/「ばらばら」
Mrs. GREEN APPLE(2)/「青と夏~ライラック 紅白SP」
南こうせつ(6)/「神田川」
三山ひろし(10)/「恋…情念~第8回 けん玉世界記録への道~」
山内惠介(10)/「紅の蝶」
【特別企画】
玉置浩二「悲しみにさよなら」
氷川きよし「白雲の城」
米津玄師「さよーならまたいつか!」
【特別企画「追悼・西田敏行さん」】
竹下景子 / 武田鉄矢 / 田中健 / 松崎しげる「もしもピアノが弾けたなら」