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映画『きみの色』は『聲の形』のアンサー。山田尚子監督のひとつの到達点

2024.9.3

#MOVIE

『聲の形』と『きみの色』の2作でより感じた山田尚子監督の優しさ

『聲の形』では、客観的にはいびつにも見える、時には傷つけ合ってもしまうコミュニケーションが描かれていた。かつていじめをした少年はその罪を背負い続け自分も他人も許すことができず、いじめを受けた被害者であるはずの少女もまた「私は私が嫌い」という自己嫌悪をあらわにしたりもする。

そんな「自分が嫌い」「その自己嫌悪を誰かにぶつけてしまう」ことを描いた『聲の形』に対して、『きみの色』では前述した通り「溢れる感情が前向きなものとして昇華される」「『好きなものを好き』といえるつよさ」を描いているのだ。それこそが、『きみの色』が『聲の形』のアンサーといえる、いちばんの理由だ。

なお、山田尚子監督は「自分に対してはまるで自信がないけれど、その状況を人のせいにしないーそれが『きみの色』という作品を描くうえで、一番大切にしたところかなと思います」と語っている。しかも、山田監督は吉田玲子の脚本について「どの作品でもある信念として『自分でなんとかしようとしていて、そこが弱さでも強さでもある』」と思っていたそうだ。

なるほど、山田尚子監督、および吉田玲子の脚本の作品は、「自信はなくても自分がなんとかしようとする様」が描かれつつも、「自分だけでは解決しない」様が描かれることも多い。自分の責任を強く感じるが、それでも大切な誰かとのコミュニケーションで、何かを解決したり、前向きな感情が生まれることもある。そんな人生によくある事象を捉えた優しい作家であると、『聲の形』と『きみの色』の2作で、より感じることができたのだ。

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