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「僕の番組が本質の部分で嘘をついていることはないし、かなり誠実に作ってる方だと思う」
―自分は『第三会議室』(※)のプロデューサーでもあったので、若干責任は感じてます(笑)。仰る通り、彼は優れたリリシストですし、過小評価されてる面はあると思います。さきほど“スタア誕生”の話が出ましたが、その頃からドキュメンタリーに興味があったんでしょうか?
※スペースシャワーTVの音楽番組『Black File』中のトークコーナーで、宇多丸とK DUB SHINEが出演していた
藤井:『ゆきゆきて、神軍』のようなスタンダードな作品は見てましたけれど、本格的に興味を持ち始めたのはこの仕事を始めてからですかね。やっているとどうしても「素材が強いもの」に惹かれてしまうんですよね。本も、学生の頃は小説も読んでましたが、社会人になってからはノンフィクションばかり読むようになってしまいました。
―先日、自分がプロデュースした純烈のドキュメンタリー映画にコメントを頂いた際にも、「途中から純烈よりもあの夫婦が気になってしまいました」と仰ってましたし。
藤井:とくにあの旦那さんは気になりましたよね。もっとあの夫婦を見てたかったです。
―そこは(カンパニー)松尾さんも同意見でした。ただ、ここは意見が分かれるところでもありまして、何故藤井さんが「攻め続けるテーマ」ばかり採用してしまうのかなんとなく分かるエピソードだなと。藤井さんの作品はドキュメンタリーの要素が強いと思いますが、藤井さんにとって「ドキュメンタリー論」的なものはありますか? 「ドキュメンタリーとは真実を映すものである」「ディレクターの意図が入ってはならない」と認識してる人もいるかと思いますが。
藤井:自分で作ってる人もそう思うんですかね? 編集経験のある人がそう考えるとはあんまり思えないですけど……編集した時点で「どこを強調するか」というディレクターの視点は避けられないし、それ自体が嘘でないのは大前提として、当然、誰かの気持ちは入ってしまいますよね。
―撮影する時点で演者をけしかけることはあるんですか?
藤井:うーん、選択肢として右と左があったとして、どっち側に転んでくださいと誘導することはないと思います。ただ、その転ぶ地点まで誘導することはときにあるかもしれないですね。まぁ、僕の番組が本質の部分で嘘をついていることはないですし、自分の知りうる限り、テレビ番組の中ではかなり誠実に作ってる方だと思います。
―誠実に作れば作るほど、逆に風当りも強くなる面もありますよね。
藤井:最近だと、見る前から「これはテレビで放送して大丈夫なのか?」とか心配する人もいますからね。どのくらい本気で言っているのかはともかく、視聴者の立場でその心配をする感覚があまり理解できないんですけどね……。
―自分の周りでも「これ大丈夫なの?」って心配する人は増えました。
藤井:食べ物だって「美味しそうだけど、カロリー高いな」って思って食べるより、シンプルに「美味しそうだな」って思って食べる方が、食事を楽しめるじゃないですか。しかも、カロリーは確実に自分に影響しますけど、番組の方はとくに影響しないことの方が多いですし(笑)。
