異色のダークリーガル・エンターテインメント『イグナイト -法の無法者-』(TBS系)がついに最終回を迎える。
映画『正体』『余命10年』などを手掛けるコンテンツスタジオ「BABEL LABEL」とTBSによる初タッグとなった本作は、訴訟を焚きつけ、大金を稼ぐ“無法者”な弁護士集団という異色な設定もさることながら、毎回のように魅せるキレの良いアクションシーンと映像美も話題となってきた。
TBS金曜ドラマ初主演の間宮祥太朗や上白石萌歌、三山凌輝のヤングチームと、仲村トオル、及川光博、りょうによるアダルトチームそれぞれの魅力も光る本作について、ドラマ・映画とジャンルを横断して執筆するライター・藤原奈緒がレビューする。
※本記事にはドラマの内容に関する記述が含まれます。あらかじめご了承下さい。
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「真っ直ぐな正義」が心を動かすダークリーガル・エンターテインメント

「その真っ直ぐな正義にだけは、絶対に嘘をつくな」
最終回予告の仲村トオル演じる轟謙二郎の声にハッとさせられた。まさにその、間宮祥太朗演じる主人公・宇崎凌、並びに本作が貫く、真っ直ぐすぎるほど「真っ直ぐな正義」に、私たち視聴者は心を動かされてきたのではないか。
そんな真っ直ぐなドラマ『イグナイト -法の無法者-』が最終話を迎える。企画・プロデュース・脚本を『絶メシロード』(テレ東系)や『量産型リコ』(テレ東系)などの畑中翔太が手掛け(脚本は、畑中の他、山田能龍、山口健人、佐和山ユカが担当)、映画『帰ってきたあぶない刑事』の原廣利をはじめ、山口健人、吉田亮が監督を務める本作は、原告になりそうなターゲットを焚き付けて訴訟を起こし、あらゆる手段を使って裁判を勝訴へ持っていく「法の無法者集団」を主人公にした、異色のダークリーガル・エンターテインメントだ。
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ヤングの活躍とアダルトのカッコ良さに痺れる

なんと言っても特筆すべきは、それぞれにハマり役を演じる俳優たちの魅力だろう。宇崎凌を演じる間宮祥太朗は、彼がかつて演じた『ナンバMG5』(フジテレビ系)の主人公・難破剛役を思い起こさせるかのような、優しくて真っ直ぐで一本気、猪突猛進という言葉がピッタリの「弁護士」を、派手なアクションシーンとともに演じることで、数多ある「リーガルドラマ」の常識を鮮やかに覆して見せた。さらには、歌唱やDJプレイなどでそれぞれのキャリアを活かした魅力を炸裂させつつ、俳優としてのこれまでのイメージを覆す役柄を好演する伊野尾麻里役の上白石萌歌、高井戸斗真役の三山凌輝。そして、本作のもう1人の主人公とも言える、宇崎ら若者たちを導くピース法律事務所の代表・轟を演じる仲村トオル。過酷な過去を抱えつつ、真の正義を追求する強さに加え、『あぶない刑事』シリーズの町田透役並みに軽やかに冗談を飛ばす明るさから、本作にあぶ刑事イズムを持ち込んでいるかのようだ。

また、本作が優れていると感じた理由の1つとして、宇崎、伊野尾、高井戸の「ヤングチーム」と、轟と同僚のベテラン弁護士・桐石拓磨(及川光博)、とある理由から轟に協力する捜査一課の刑事・浅見涼子(りょう)の「アダルトチーム」、それぞれの魅力と絆が際立っていたことが挙げられる。第3話で轟と自分が加害者遺族と被害者遺族という関係性であることを知り、轟の親切を不審がる宇崎に対し「おじさんたちを信じろ」と桐石が言うように、本作は宇崎ら若者たちの活躍を見るドラマであると同時に、轟たち「大人」のカッコ良さに痺れるドラマでもあった。