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幼少期の想い出や歌い方、HUGENとして出したいのは「そのまま」
HUGENというユニットは、自分がどこからやってきたのか表現したい。「ルーツ」に対するそんな思いは、あくまでも匿名的なユニットであったCity Your City時代にはないものだった。

HUGENとして最初に作られた楽曲が、疾走感あふれるドラムンベースのトラックの上にTPの歌がふわりと乗った“MAYA”だ。この曲は生まれたばかりのTPの子供をテーマにしており、グループのスタートと新しい生命の誕生が同じタイミングであることに必然を感じさせる。ポジティブなエネルギーに満ち溢れた“MAYA”は、いわば命を賛美する歌でもあるのだろう。
TP:娘が生まれた日はまだコロナ禍だったので、出産の日は僕ひとりで家に帰らなきゃいけなかったんですよ。何か無性に曲を作りたくなって、その日中に歌詞を書いてインスタに動画をアップしました。子供が生まれるというのは自分にとってすごくメモリアルなことで、何か残さなきゃと思ったんでしょうね。この曲も大それたメッセージがあるわけではなくて、娘のことは好きだし、会いたいし、それをそのまま歌おうと。

その後リリースされた初EP『祭』は、祭り囃子を思わせるビートが敷かれた“桜源郷”で幕を開ける。City Your Cityでは匿名性の高いポップミュージックをやっていたTPが、HUGENで土着的なエッセンスに向き合うのはなぜなのだろうか。
TP:もともと祭りっぽいビートが好きで、いつかやりたいと思ってたんですよ。でも、エレクトロニックミュージックで「和」を取り入れたものって日本的すぎるものが多いイメージがあって。海外から見た和のイメージが過剰に意識されているものというか、企画ものっぽい感じというか。それはそれで好きなんですけど、自分がやるならばそういうものじゃないほうがいいと思っていて。そんなときに“桜源郷”のトラックができたんです。
TP:“桜源郷”は曲調も夢の国っぽい感じだし、『千と千尋の神隠し』みたいな世界観にしようと思って、ああいう歌詞になりました。実家の近くに海津大崎(滋賀県高島市)という場所があるんですけど、そこは桜の名所なんですね。父ちゃんと一緒に車で行ったことがあったので、そこをイメージして『桃』ではなく『桜』にしました。
“桜源郷”の朗々としたTPの歌唱にはどこか民謡的な香りも漂うが、その理由はこんなところにもあるようだ。
TP:僕のことを育ててくれたじいちゃんが詩吟をやってたんですよ。家ではテレビのチャンネル権がじいちゃんにあって、3時間の演歌番組を見せられていました(笑)。その影響なのか、昔から僕が歌うとコブシがよく回るところが演歌みたいだと言われていましたね。自分ではジェイムス・ブレイクみたいなことをやりたいのに(笑)。でも、今となってはそれもありだなと思えるようになりました。
