メインコンテンツまでスキップ
NEWS EVENT SPECIAL SERIES

栗野宏文インタビュー後編 「脱エリーティズム」を掲げて、ファッションの行末を見つめる

2024.8.22

#FASHION

ファッションは社会インフラの一つ

―教育や社会の中でのオルタナティブはどのような影響をもたらしていくのでしょう?

栗野:2022年の杉並区長選挙の結果、杉並区で岸本聡子さんが区長になったことにも同じ印象を受けました。岸本さんはもともとオランダに住んでいらして、市民運動に関わった経験から日本に戻って杉並区長選挙に立候補しました。政治をビジネスとしていない、等身大の国民が我々の代弁者として選ばれることが民主主義の本来の姿だろうし、本来そうだったことがいつの間にか変化してしまったことに対して、人々の疑問やフラストレーションが形として現れたんだろうと思います。

斎藤幸平さんと松本卓也さんが志を共にする人たちと共にまとめた共著『自治とコモン』にも岸本さんは登場していて、読んでいてとても参考になりました。政治と時事に関する内容ではあるけれども、21世紀がより良い社会になるためのさまざまな見方が詰まっています。ここに小売屋の話が書かれていたのもものすごくうれしいことでした。自分は小売業界に40〜50年近くいて、UNITED ARROWSがサブプライムローンやコロナを乗り越えて続けてこれたのは、小売というものを決して卑下せず、あるいは過剰に評価をせず、忠実に交流してきたから生き残れたんだろうなと思っています。

―より良い社会を築く方法の模索は、私たちの生活と結びついている。

栗野:なぜその話題を取り上げたかというと、ファッションはただ物を買って終わりという話ではなく、それを作る人が生活したり、売ってるお店があったり、売ってる人たちが税金を払ったり、そこで働く人たちの家があったりと、一つの社会インフラに関わるわけですよ。そういう意味で、今のままファッションがラグジュアリービジネスに引っ張られてしまうとお金を持っていることだけが美徳になり、お金持ちのための世の中になってしまいます。残念ながらファッションはそのような側面に取り込まれつつありますが、日本はそうでないと信じています。僕は、日本のデザイナーや日本のもの作りを支える人、新しい日本の教育のあり方、『cococuri』でやろうとしたことにしろ、ファッションをそういうマネーゲームから取り戻すことで誰かの役に立つものにしたいんです。

RECOMMEND

NiEW’S PLAYLIST

編集部がオススメする音楽を随時更新中🆕

時代の機微に反応し、新しい選択肢を提示してくれるアーティストを紹介するプレイリスト「NiEW Best Music」。

有名無名やジャンル、国境を問わず、NiEW編集部がオススメする音楽を随時更新しています。

EVENTS