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「世間とズレている」ならポップソングで歩み寄る。Helsinki Lambda Clubの相互理解の実践
―“たまに君のことを思い出してしまうよな”は「今までで一番ポップスに接近した曲を作りたい」という思いから生まれた曲とのことですが、ポップな曲に取り組もうと思ったのはなぜなんですか?
橋本:最近のヘルシンキはサイケな路線が多いですし、「この路線を貫いた方がいい」と近しい人に言われることもあるんですが、僕はポップなこともやりたくて。ヘルシンキはそれが可能なバンドであるとも思うんです。
これまでも、できるだけたくさんの人に届けることを意識して作った楽曲はありますが、「世間と多分ズレてんだろうな」っていう意識は年々増すばかりで(笑)。“たまに君のことを思い出してしまうよな”も、自分としては最大限ポップスに歩み寄った楽曲で、胸を張ってリリースしたけど、どこまでポップスになっているのかというテスターであり、どれくらいズレているのかを測るものさしでもありますね。
―なぜ「世間とズレている」と思うんですか?
橋本:例えば、自分が好きなアーティストの楽曲は、サブスクのアーティストページで表示される人気曲の7番目とか8番目のものが多くて(笑)。みんなと好きな曲が違うんだなって。それに、売れてないとは思いませんが、Helsinki Lambda Clubというバンドがもっとデカくなってもいいんじゃないかなという気持ちも常にあるんです。

―「ヘルシンキなりのポップソング」を通して、世間とのズレの距離を測る努力はまさに、相互理解の実践だなと思いました。”たまに君のことを思い出してしまうよな”では、久しぶりに外部プロデューサーとして堀江博久さんを迎えての制作となりましたが、外の人を迎えた制作で見えたバンドの気づきはありましたか?
橋本:「ライブで表現できないことはやめよう」という堀江さんが示していただいた方向性のもと、サポートメンバーを含む4人でできることを尊重してもらった、学びの多い制作でした。そしてやっぱり、打ち込みなどのいろんなアプローチをこれまで試してきたものの、ヘルシンキはシンプルにバンドなんだなと再確認できたんです。これまでいろんなことに手をつけてきたんですけど、無機質なものではなくて、有機的な人の繋がりでできているバンド。だから時には矛盾することだってある。