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「『記録映像』はライブには負けちゃう」七里圭と河合が語り合った第二夜
この日は、河合監督が「心から尊敬している」という映画監督・七里圭との共演が実現。「ライブ映像が映画になるためには」というテーマで対話した。
七里は「もうね、ノリノリだった! すごいポップ、僕の大好きなエンターテインメント。揺れ動きながら観てましたね」と興奮気味に感想を話し、「パフォーマーっていうのは手に届かないところにいる人たちで、辛うじてその人たちと組み合うことができるとしたら、映画を作ることなんですよ。ただ、パフォーマンスというものは絶対映らないとも思ってる。映らないところにパフォーマンス、ライブの本質があって、それを映画にするっていうのは、そもそも不可能に挑戦することで、だからそこで何かを考える。映画というものを考える。映画としてパフォーマンスをどうするかっていうのを考える」と話した。

その上で「ただ、例外が1人だけいて、それが河合さんなんですよ。映像がライブになっちゃうんですよね。独特の嗅覚というか、フレームワークというか、ピントだとか、ちょっとしたことだと思うんだけど、パフォーマーとシンクロする。被写体との関係性ができている。さらに言うと、河合さんのカメラは、他のカメラと混じり合わないんです。それだけの個性がある。映画のカメラではないというか、踊っているような感覚がある。だから、河合監督の作品は一番ライブなんだよ」と評する。
河合監督は照れ笑いを浮かべながら、本作の上映を新宿 K’s cinemaから始めた理由について告白。七里が2022年に発表した『背 吉増剛造×空間現代』を同館で観賞し、作品の素晴らしさと音の良さに感動し、「『平家物語 諸行無常セッション』と同時上映したい」と思ったことがきっかけだという。
『背 吉増剛造×空間現代』は1939年生まれの詩人・吉増剛造と、空間現代が京都のライブハウス「外」で行ったコラボレーションの模様を記録したもの。画面には吉増の背中だけしか映らず、空間現代は画面には全く映らない。音だけである。
七里は「絶対敵わないんです。音楽だけじゃないです、ダンスも、演劇もそう。その時、その場にあったパフォーマンスは絶対に画面には映らないし、『記録映像』はライブには負けちゃうんだよね。だから、相手にリスペクトがあればあるほど、ただ『記録させてもらいます』ということにはしたくない」と前置きし、「この作品は、『こういう風にしか組み立てられないだろうな』っていう位置にカメラを置いて1人でやる。そんなに広くない会場の中の真ん中に吉増さんがいて、それを取り囲むように客席を作り、その間に空間現代の3人がいた。これはもう、何かを捨てるしかない。3人も吉増さんとは何度か共演していて、曲を作ってあてるっていうことはしてたけど、インプロビゼーションは初めてだったんですよ。そういう緊張感も伝わってきて、『3人は音になろうとしている。音は撮れないよね、音は音であればいい』と思い切りました」と当時を振り返った。

その経験を踏まえて、「映画って、そうやって何かを捨てることで、欠如した部分を想像してもらって、それによって何か膨らみができるみたいな効果がある」と述懐し、河合監督の思いに共感した。