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NEWS EVENT SPECIAL SERIES

神保治暉がエリア51で挑戦する、観客を劇場の枠組みから解放する音楽演劇

2024.9.26

#STAGE

「劇場の構造を解体する」という挑戦

―作品だけでなく、空間そのものを心地よいものにするために「音楽演劇」を追求されていることが伝わりました。劇場とライブハウスを横断して活動しているのもやはりそういった理由からなのでしょうか?

神保:ここ数年で客席の多様性を考え始めたことも影響していると思います。劇場とライブハウスでは客層が住み分けられている印象があるので、自分たちが行き来することで客席にも融合や交差を生めたらいいなと考えています。

あと、僕自身が劇場で過ごす時間にキツさを感じることがある、という経験も関係しています。上演中は様々な制約がありますし、場に閉じ込められてしまうストレスがあると思うんです。そんな中で政治やジェンダーや差別問題など、対話がまだまだ必要な題材が語られるのですが、観客はそれを一旦見ておくしかない。そういう状態に逃げ場のなさを感じることが多々あって。

―最近はトリガーアラート(※)の発信や退室のしやすい席への案内なども見受けられますが、それでもやはり上演中は出づらい空気がありますよね。

※編注:トラウマ(心的外傷的出来事)体験を刺激する可能性のある表現について、上演前にあらかじめ周知すること。近年認識が広がってきている。

神保:社会において「人と人とが距離を取れる自由」が与えられている状態がベストだと思っているのですが、東京ではそれがすごく難しいですよね。満員電車をはじめ、日常でも人と距離を取ることが許されない状況が多い。劇場はまさにそれを煮込んだ状態だと思うんです。

この数年で、「劇場に訪れる人々をどう育んでいくか」や「作品と観客をどうやって出会わせるか」といった創客のロジックが語られてきましたが、そもそも劇場という場自体が今の人々の暮らしや文化と乖離している。だから作品というソフト面より、劇場ないし空間というハード面にアプローチが必要だと思っています。なので、ここ数年は「作品を作る」というより「劇場を作る」という感覚で創作に向かっている気がしています。

―そういった創作に向かう中で神保さんが影響を受けたものは?

神保:音楽家の曽我大穂さんが主宰する仕立て屋のサーカス(※)にはすごく影響を受けました。お子さんのお客さんも多く、どこにも支配がなく、それぞれにとっての素敵な瞬間が同時多発的に生まれていく空間なんですよね。新宿ルミネゼロでのステージで曽我さんが演奏しながらストリングライトを一人のお客さんに渡して、みんなで繋げていくという場面があって……。僕の手前の人で電飾が絡まっちゃって、それが解けるのをみんなで見守っていた時に「こういう瞬間を演劇で作れたらいいな」と強く思ったのを覚えています。

あと、高山明さんの『テアトロン 社会と演劇をつなぐもの』という本から得たものも大きいです。人々にとって自由な場を作ろうとする時には劇場の構造を解きほぐさなくてはならない、というような話に感銘を受けました。

※編注:音楽家「曽我大穂」が主宰 / 演出し、服飾家など様々なジャンルの制作プロジェクトチームで構成される、サーカスのような舞台芸術グループ。

神保:そういった影響もあり、前作『冠婚葬祭』では、開始すぐと中頃に休憩を2回入れ、出入りや席移動も自由、撮影もOKにして、可能な限り劇場における制約を解す実践を行いました。エリア51の音楽演劇では、できるだけ人々の距離や自由を担保したい。そうした実践を重ねていくことで、もっと様々な方をエンパワーメントできたら。それが、自分が演劇をやる上での社会的意義だと感じています。

―初のワンマンライブとなる『ま、いっか煙になって今夜』がまもなく開催されます。最後にその展望をお聞かせください。

神保:ある曲の振付をエアーマンさんというチームが手がけて下さるのですが、このコラボはNEWSのライブでのご縁が繋がって実現したんです。加えて、過去作にも出演して下さった俳優の円井わんさんや、メンバーでハリー・ポッターの舞台に出演していた門田がホームに戻ってきてくれることもあって、これまでの活動で出会ってくれた人たちとの心強い集結となりました。僕自身、純粋に楽しみですし、初演とはまた違った、ライブハウスで楽しむことに特化したショーがお見せできると思います。「演劇畑から来たぞ!」という意気込みで、ライブハウス空間への新たなアプローチの一つとして前の席は畳にしようと思っているので、座って観たい方にも気軽に遊びに来ていただけたら。それぞれの楽しみ方で同じ空間にいてもらえたらうれしいです。

エリア51 1ST ONEMAN LIVE『ま、いっか煙になって今夜』

日時:2024年9月27日(金)〜9月28日(土)
9月27日(金) 18:30
9月28日(土) 14:30/18:30

作・演出・音楽:神保治暉(エリア51・AOI biotope)
振付:振付稼業 air:man(新曲「床とテキーラ」)
出演:Vo. 鈴木美結 Gt. 神保治暉 Ba. 廣戸彰彦 Mrb. 中野志保 (以上、エリア51)
円井わん / 熊野美幸、中嶋千歩 / 門田宗大(エリア51)
会場:Shibuya eggman
料金:ADV 4,600円 (+1D) DOOR 5,000円 (+1D)
チケット:LivePocket  https://t.livepocket.jp/e/desolvation
公演公式HP:https://t.livepocket.jp/e/desolvation
公演公式X(旧Twitter):https://x.com/area51_tw
企画:エリア51 https://www.area51map.net/
主催:AOI Pro.

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