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間違いのない製品だけでなく、暴投のようなユニークな製品も出すのがHondaらしさ
タカノ:バイクのデザインは、どこから始めるものなんですか?
やまざき:人とかメーカーによっていろいろあるんですけれども、僕の場合は、例えば「50ccの原付バイクを作る」という企画が下りてきたら、どういう人がどういう場所で使うか、というところから考えます。あと1番大事にしているのは、それをどうドヤってくれるかですね。新しいものを買ったら「ちょっと見てこの時計!」なんて言って自慢したくなるじゃないですか。そういうシチュエーションを思い浮かべて漫画を描くんです。
タカノ:漫画を描くんですか!
やまざき:ZOOMERの場合は、原宿のイケてる美容師さんが店に乗っていくのに使うバイク、と想定していました。当時駐輪ができたので、原宿にずらっと並んでいたらさぞかっこよかろう、と思い浮かべていましたね。
タカノ:めっちゃわかりやすいですし、イメージが湧きますね。
やまざき:スケボーとかを積んでいてもかっこいいだろう、みたいな。そういうのを思い浮かべながら、ふさわしいデザインはどんなものなんだろうと考えていきます。その上で、コストとか機能面とか安全性とかを考慮しつつ、最後の味付けでHondaらしさを入れていくという作り方をしていますね。
タカノ:そう考えると、本当にクリアしなきゃいけない条件がいっぱいある中で、デザインしているんですね。
やまざき:そうなんです。ApeやZOOMERは特に社内でも揉めに揉めたというか、ラブヘイトが強かったんです。ただ、ちょうどいいタイミングで、社内に「若者プロジェクト」というのがありまして、「若い子たちに任せようや」と言ってくれる上司が何人かいらっしゃったんです。当時僕は若かったんで、「若い子の言うことを聞け」みたいな感じで作りました。
タカノ:いい社風ですね。
やまざき:まさにHondaイズムですね。「やればいいじゃん」みたいな。
タカノ:先ほどからHondaの皆さんからリクエスト曲やメッセージをいただいているんですけども、すごく真剣に、純粋にもの作りや人に対して向き合っている方が多いなという印象があります。その辺りもHondaイズムを感じますね。
やまざき:そうですね。僕は本当にギリギリ会えなかったんですけど、本田宗一郎に会って、しこたま怒られたり褒められたりしたかったなと思います。
Celeina:先ほどデザインをするにあたってのお話で、「最後に加えるのがHondaらしさだ」というお話がありましたけれども、Hondaらしさはどういった部分にあるんですか?
やまざき:まず当然ですけれども、品質とか性能みたいなものは折り紙付きで、あと僕の中では2つあると思っています。お客さんもそう感じているのかもしれないんですけど、間違いのないものを作るということです。例えば、絶対に速い、絶対に便利、絶対に人の生活を豊かにするとか、そういうものを作る。ただその反面、たまに暴投というか、「なんでこれ出した」みたいな製品も作るというのが、Hondaらしさだと思います。僕は暴投側の製品を担当することが多かったんですけど(笑)。