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高度経済成長期のバングラデシュで撮影した、列車の屋根に乗る人々
タカノ:そして、松本さんがバングラデシュで撮影された写真をまとめた写真集『電車は止まらない』。こちらは2022年に発売されましたが、すごく濃厚な作品なんです。

松本:ありがとうございます。
タカノ:まずは写真集の概要を教えてください。
松本:僕がたまたまバングラデシュに行ったときが、高度経済成長期のど真ん中だったんです。古い建物がどんどん壊されて、その向こうでは新しいビル群がどんどん立ち上がっていたんです。その真ん中をボロボロの列車が屋根に人を乗せて爆走しているという光景を見たときに、虜になってしまって。
ただ、2020年に新しい電車が開通する予定で、そうなると列車の屋根に乗ることが法律で禁止されるという動きになっているという噂を聞いて。そこで、みんなが列車の屋根に乗っているところから、乗らなくなるまで、というのを取材したら1つの作品になると思って、制作しました。
タカノ:躍動感というか、スピードが伝わってくるような写真です。

Celeina:世界に1枚の写真がたくさん収められていますね。
タカノ:意外と皆さん、結構健やかな表情されていますよね。

松本:気付きましたか? みんな超ハッピーなので、バングラデシュはすごくいい思い出ばかりですね。法律自体はだいぶ前に強化されていたので、撮影は3回4回ぐらいで終われるのかなと思っていたんですよ。それが結局400回以上列車の屋根に登って、終わりまでに1年半かかってしまいました。
Celeina:電車の屋根に乗るというのはバングラデシュでは当たり前の光景なんですか?
松本:当たり前ではあるんですけど、普通の家とか富裕層の子たちは、家庭で「あそこの駅行っちゃ駄目よ」とか「絶対登っちゃ駄目よ」と言われるような感じでした。どちらかと言うと、貧困層の子供たちの遊び場みたいな形で機能している部分も大きかったですね。なので、子供たちが落ちたりして事故につながることも多かったので、今はもうダッカでは完全に乗れなくなりました。
